最終年度は慢性脊髄圧迫のモデルとしてスペーサーによる慢性圧迫を試みたが、再現性のある実験系の確率は困難であった。またTwyマウスの使用も個体間のばらつきが大きいことと、繁殖を要するため研究期間内で成果をあげることが困難と考えられた。その上で、再現性に優れた化学的脱髄モデルであるカプリゾンを用いた脳梁部の脱髄モデルを使用することとなった。このモデルは既に研究室にて確立しており、このモデルのアストロサイトのErk2に介入することで炎症全体が軽減することは知見として得られていた。最終年度にはその解析をさらに進め、RT-PCRや組織学的解析の結果アストロサイトから分泌されるCCL2が重要な分子であることを同定した。文献的にCCL2は炎症を誘導するケモカインであるとともに、慢性的な脱髄疾患である多発性硬化症の組織切片でも検出が報告されている。また、アストロサイトのErkシグナルを阻害することでCCL2の分泌が抑制されることも明らかとなり、今後の治療ターゲットの候補となりうる可能性が示唆された。
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