研究課題/領域番号 |
25560278
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
滝沢 穂高 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40303705)
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研究分担者 |
水野 慎士 愛知工業大学, 情報科学部, 教授 (20314099)
江崎 修央 鳥羽商船高等専門学校, 制御情報工学科, 教授 (30311038)
青柳 まゆみ 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (40550562)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 視覚障がい者 / 支援システム / Microsoft Kinect / 物体認識 / ユーザインターフェース / 音声認識エンジン / ユーザ実験 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトでは,生活環境中の物体を単なる障害物として検出するだけでなく,その物体が何であるのかも認識し,視覚障がい者に情報提示する支援システムを開発している.平成26年度は主に下記の研究項目を進め,本システムの機能を拡充し,改良を行った. (1)本システムは,コンシューマ向けの測距センサーである Microsoft Kinect センサを白杖に搭載し,そのセンサで得られる距離情報から環境中の物体を認識する.平成25年度までに認識可能な物体は,歩行するための床,休息に使える椅子,上りおよび下り階段(視覚障がい者に聞き取り調査したところ直上や直下の階ならば階段を使うことがあるとの事だった)の4種類であったが,平成26年度はさらに以下の3種類の物体を認識できるように改良した.(a) エレベータ(より遠くの階に移動するために使用できる),(b) 机(ノートPCを広げて読み書きをしたり,手荷物を整理したりすることができる),(c) 手摺(廊下等における歩行ガイドに使うことができるだけでなく,点字シールが貼付されていてトイレの方向等の情報を取得することができる).(2)従来システムでは,白杖に搭載したテンキー(数字のキーボード)によってシステムにコマンドを入力していたが,音声エンジンとマイクを新たに搭載することに「声」で入力できるように改良した.これにより例えば「椅子」と発話することによって,椅子を探索することができるようになった.なお,現行システムではテンキーも搭載しており,発話がし辛い状況ではテンキーによるコマンド入力も可能となっている.(3)今年度改良を加えた点について,目隠し晴眼者によるユーザ実験を実施し,改良システムの有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の「研究目的」では,以下の3点を「明らかにする点」としてあげていた:(ア)画像認識技術の開発,(イ)ユーザインターフェースの開発,(ウ)ユーザ実験による評価. まず(ア)について,「研究実績の概要」の(1)で述べたように,視覚障がい者の生活の利便性を向上させる物体を新たに3つ認識できるようになり,本システムの有効性を向上させることができた.(イ)について,同(2)で述べたように,新たに音声認識エンジンを組み込むことによって,従来より分かりやすく簡単に操作コマンドを入力することができるユーザインターフェースを開発した.ただ,システム全体の重量および大きさに関して,白杖として使用するにはまだ検討の余地があり,今後さらなる小型軽量化が必要と考える.(ウ)について,実験室環境および実環境での評価の結果,従来より多くの物体をより簡単な操作で探すことができ,本システムの有効性を確認することができた.
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今後の研究の推進方策 |
上記の3つの研究項目について今後の課題を下記にまとめる. (1)これまで,床,椅子,机,階段,エレベータ,手摺を認識する手法を開発した.今後は認識できる物体の種類を増やすとともに,その物体がどのような状態にあるか ― 例えば,椅子はあるが,人が座っていて使えない状態 ― を認識できるように発展させる必要がある.(2)現在は,安価で入手が容易な市販の部品を使ってインターフェースおよびシステム全体を構築している.この方針は本システムの取得性を向上させることはできるが,一方でシステムの小型軽量化を難しくしている面もある.今後は,前述の方針とともに,パッケージ化された試作システムを製作することも考えていく.(3)これまでは主に目隠し晴眼者によるユーザ実験で,システムの性能評価を行ってきたが,白杖の使用に熟知した視覚障がい者によるユーザ実験を行い,意見を頂いた上で,物体認識手法やユーザインターフェースの改良を行っていくことが必要と考える.
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