日本人に特徴的な膝の内反変形(いわゆるO脚)と相対的な現象として現れる踵骨外反変形に着目した。X線評価法であるKellgren&Lawrence分類(grade0-IV)を使用し膝OAの重症度分類を行った。結果、膝の内反変形(膝OAの重症度)と踵骨外反変形はある程度相関があることが分かった。膝の内反変形が重度なほど、足底外側部接地に伴う外側部の知覚過敏と内側アーチ部の知覚鈍麻という「足裏感覚アンバランス」が悪化している傾向にあった。一方、踵骨外反変形を伴う患者では足底部内側過敏になる傾向にあった。以上より、本研究により、下肢アライメントと足裏感覚に対する予備データの構築をすることができた。 本患者に対するリハビリテーションアプローチとして、外側過敏に対しては外側楔靴底補正による足底荷重面の矯正および母趾を中心とした足趾による摘み訓練を実施して内側アーチ面の感覚強化、また、踵骨外反変形に対しては内側アーチ矯正足底板使用とした。 結果、足裏感覚アンバランスと足底部内側過敏が改善される傾向にあった。足底面は地面と接している唯一の身体部位であり、この部位の感覚の鋭敏さは歩行などの立位姿勢の保持に大きく影響していることが明らかになっている。骨アライメントの異常をきたす変形性膝関節症の場合、骨アライメント由来の足底感覚異常が起こっているとすれば、足底の特異的感覚フィードバックにより正確な運動を行うことができず、歩行の姿勢や立位姿勢に大きく影響を与えると考えられる。 今後さらに、本足裏感覚測定を介護予防のスクリーニング手法のひとつとして導入することにより、自覚が薄いまま徐々に進行する潜在的変形性膝関節症者への転倒予防プログラムに発展することが期待される。
|