研究課題/領域番号 |
25560287
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊良皆 啓治 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (20211758)
|
研究分担者 |
野口 幸弘 西南学院大学, 人間科学部, 教授 (30352199)
井手 順子 西南学院大学, 人間科学部, 准教授 (20289507)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 非拘束脳波計測 / 近赤外分光計測 / 脳波解析 / 障害児 / 言語認知 |
研究実績の概要 |
知的障害児童や発達障害において知的に遅れが見られる子供について、言語の習得を支援する技術を開発することが本研究の目的である。このため、脳の情報を脳波やNIRS(近赤外分光計測法)によって計測し、その時の精神状態、例えば集中状態にある、あるいは興奮状態にあるといった状態をモニターし、それを学習課題に反映させ、体積な学習状態、学習課題を課すシステムを目指している。 この計測システムは、無線で計測信号をコンピュータに送る脳波計、NIRSを用いており被験者は非拘束の状態で学習に専念できる。このためには、少々の頭や体の動きなど体動があっても安定して信号が計測できることが重要であり、今年度は、脳波信号から体動を除去する信号処理法の開発を行った。頭の動きを検出するため、加速度を計測するセンサを頭部に付け、この情報をもとに、独立成分分析で分類した信号から、体動に由来する成分のみを除去し、高い精度で脳波信号のみを抽出する技術を開発した。今回はまだ、信号取得後に、オフライン処理で行っている段階だが、1~2秒の時間遅れでモニタできるオンライン処理法を開発中である。 さらに、言語の中でも特に身近な自分の名前が呼びかけられた時に脳がどのような反応をするのか、意識状態が非常に低い重度心身障害児を対象に、自分の名前、他者の名前を用いて呼びかけ反応を調べた。その結果、長期記憶に関係していると言われているアルファ帯域の脳波抑制が、健常者と同じように観測され、重度心身障害児に自分の名前を記憶している可能性があることがわかった。しかし、健常者に見られたベータ波帯域の脳波の抑制は見られず、自己関連認識の機能が保存されている可能性が低いことが示された。今後は、ここで得られた、アルファ波、ベータ波の変化をもとに、記憶、認知の状態をモニタできることを目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非拘束脳波計測時のアーチファクト除去は概ねうまくいっており、あとはオンライン時の処理に向けて、遅れ時間をどれだけ短くできるかである。また、認知状態のモニターにアルファ波とベータ波の変化が用いられることがわかり、これをニューロフィードバックに応用できる。 遅れている点は、言語の学習課題をどう構築するかである。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究で重要な点は、できるだけ自然な状態で認知、集中状態の把握であり、その情報を用いて適切な課題を提示し、またその時の脳の状態を計測しフィードバックすることである。適切なフィードバック情報の抽出が、第一の課題であり、それに応じた、言葉学習課題の作成を行うことが必要である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会が地元であり旅費が多くかからなかったこと。並びに、特に物品を購入することなく研究が遂行できたので予想外にお金を使用しなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
最終年度であり、システム構築のための物品購入費、および成果発表の旅費に使用する予定である。
|