研究課題/領域番号 |
25560293
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
末永 貴俊 仙台高等専門学校, 知能エレクトロニクス工学科, 准教授 (90380998)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歩行支援 / 路面情報 / ソーシャルフレームワーク |
研究概要 |
自分の足で歩き,人々と交流を持つことは,体力面のみならず精神面での健やかさを維持するために重要であるが,転倒・転落などが原因でその機会を失う人達もいる.本研究では,人々が安全に国土を歩行できるように支援するための情報を「調査・収集・提供可能なシステム」の構築と運用を目的とし,傾斜などの路面情報を広域的に収集するための「クローラ型情報収集デバイス」および,人々が互いに情報提供しあい,日々最新の路面情報を維持することを支援する「ソーシャルフレームワーク」の開発を目指す. 「クローラ型情報収集デバイス」とは,路面に接地して移動し,様々な情報を取得するデバイスである.本研究では,GPSと加速度センサを組み合わせることで,位置と路面情報の正確な紐づけを可能にした.本デバイスは.H24年度に試作を終え,仙台市中山地区で情報収集実験を行った.その結果をもとに改良を行い,H25年度は仙台市錦ヶ丘地区を新たに測定対象として路面情報の収集を行った. 収集した情報はGoogleマップと連携し,PCやスマートフォンで閲覧可能であるが,児童や高齢者にとっては,汎用情報機器を扱うことが難しい場合も想定される.そのため,H25年度は,収集した情報を児童や高齢者にもわかりやすく提示可能なデバイスの開発にも取り組んだ. 本デバイスは,マイコンと小型液晶モニタ,GPS,3G回線用モジュールを組み合わせ,乾電池で動作する.本デバイスは電源スイッチを入れるだけの簡単な操作で利用でき,GPSで自分の現在位置を取得後,サーバに周囲の路面情報を問い合わせ,得られた情報を液晶モニタに表示する.このデバイスにより,現在位置の周囲50m四方の路面情報を取得・提示することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で新たに構築する「ソーシャルフレームワーク」のうち,クローラ型路面情報収集用デバイスは試作を重ねてほぼ完成している.また,収集した情報を共有・提示する手段については,クローラで収集した情報を一部手動で変換しているものの,Googleマップ上での情報共有ができ,PCやスマートフォンでの情報閲覧が可能となっている.このことから,ソーシャルフレームワークの基本的な機能の実装は完了していると言える. 一般の住民にも利用してもらう手段として,独自に情報提示デバイスを開発し,実際の道路で動作確認を行った.これは本来H26年度の計画で行う予定の内容であるが,実証実験に参加する被験者を集めやすくする意図で,予定を前倒しして取り組むこととした.このデバイスで使用する路面情報は,クローラで収集したデータをもとに生成し,インターネット上のサーバを介して提供している.一旦サーバに登録した情報は,3G回線を介して自動的に本デバイスに提示されるため,高齢者や児童でも容易に使用することができる. 研究計画の中で未着手なのは地元住民による実証実験であるが,上記のクローラデバイスからの情報を自動でサーバに登録する機能と,情報提示デバイスの量産を行うことで,評価実験をより円滑に実施できると考えている.そのため,実証実験はH26年度中盤で実施する計画としている. 研究の達成度については,前述の通り,未着手の部分があるものの,計画を前倒しして取り組んでいる部分もあるため,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
提案システムについて,住民に実証実験をしてもらうことが必要である.したがって,構築したシステムや開発したデバイスが一般住民にとって使いやすいものである必要がある.現時点のシステムは,一部手動でデータを変換・登録していたり,使用する際に「コツ」が要るデバイスもある.研究室レベルでの利用であれば問題ないが,本研究では住民自身が情報登録が容易にできるシステムを目標としているため,今後も改良していく必要がある.現在,GoogleのFusionTablesというデータベース環境を用いて,自動登録機能のテストを行っているため,H26年度で機能の実装が可能になる見込みである. クローラ型情報収集デバイスについては,路面の傾斜情報収集時に一旦足を止める必要があるため,正確な情報収集を行うためのコツが必要である.現在,動きながらでも情報収集が可能なアプリケーションを開発中であるが,クローラ型デバイスと比較して十分な精度の情報が得られるかは今後の実験を経て評価していく. 独自開発した情報提示デバイスについては,乾電池駆動で持ち運びしやすいという利点があるが,GPSからの位置情報取得や3G回線を介した通信を行うため,電池の消耗が激しく,長時間利用することが出来ない.これは実際に利用する場面で大きな問題となるため,省電力化の工夫が必要となる.「電源を入れてすぐ利用可能になる」という利点を損なわずに省電力化を図る手段については,現在検討中である.
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