平成26年度は第一に、多極同時刺激による刺激効果の加重様式を確認した。臨床では単なる筋肉の収縮ではなく、日常生活に有意義な大きな力と動きを刺激によって制御する必要がある。そのためには、多極への同時刺激は必須であるが、現在まで至適な刺激パラメタは確立していない。そこで、FMA最大5チャンネル同時に様々なパラメタで刺激を行なった。電極ペアによって、筋電図出力が各チャンネル単独刺激の線形和になる場合は少なく、多くの場合非線形性を示した。具体的には非線形的促進(線形和より大きい)、非線形的抑制(線形和より小さい)が観察された。次に、刺激時の上肢姿勢が刺激効果をどのように修飾するのか定量化した。臨床場面では、患者の安静字姿勢を制御することは不可能である。例えば手が体幹の右にある場合と左にある場合で刺激効果が異なるなら、その点も考慮した刺激パラメタの確立が必要である。そこで、刺激開始時の手の位置が誘発運動に与える影響を系統的に探索した。その結果、体幹部に対する手の相対的な位置の相違により、脊髄刺激効果が有意に異なる事を発見した。この事は、手の初期位置を考慮に入れた刺激パラメタの確立が必須である事を示していた。以上のような刺激加重の非線形性と、刺激効果の初期位置依存性は本研究で初めて明らかになった。今後の脊髄刺激による機能再建技術開発にとって重要な知見を報告できた。
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