本研究は社会的な学習メカニズムの解明を目指し、その一つの基礎となる身体動作の模倣の計算論的モデルの構築を目的として行った。身体模倣の実現には、複数の感覚器・効果器の間で、さらに自己と他者の間で表現を変換する必要があり、高度な計算過程を要する。制御理論に基づく既存手法では、十分な情報が与えられた下での、精密な運動制御を可能とする。しかし、既存手法では、完全な情報が得られない他者の運動から、身体的な制約の異なる自己の運動への対応付けは困難である。本研究は、異なる身体間の複数の感覚器・効果器上の運動パタンが、力学的な位相空間に変換できる事に着目し、この位相構造の類似性に基づく模倣学習理論を提案した。
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