研究課題/領域番号 |
25560304
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
佐藤 純 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 准教授 (20327266)
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研究分担者 |
湯川 進太郎 筑波大学, 人間総合科学研究科(系), 准教授 (60323234)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 死の自己決定 / 死生観 / 調査研究 |
研究概要 |
本研究は,これまで死生学,法学,倫理学等の領域で中心的に議論されてきた「死の自己決定」について,「死の自己決定意識」という心理学的視点から実証的に検討することを目的としている。「死の自己決定意識」とは,例えば自殺や安楽死といった生死に関わる重要な事柄に関して,自分の意思で決定することに対する意識を意味する。特に,自殺という行為は自らの死を自己決定した結果に他ならない。現在,自殺予防教育の重要性が指摘されており,そこでは自らの命をどう捉えるかが大きなテーマとなる。各年齢や性別ごとの「死の自己決定意識」や影響因を明らかにすることにより,自殺予防教育や自殺未遂者に対する危機介入方法への一助となることが期待できる。 そこで,最初に「死の自己決定」に関して死生学,法学,倫理学等の関係諸領域において議論されている問題点を理解し,整理するという作業をおこなった。死に関する問題は社会制度や文化によって捉え方が大きく変化すると考えられるため,最新の関係諸領域における知見を押さえておくことが重要であるためである。死生学,社会学,法学,倫理学に関する論文ならびに書籍を合計約50編概観し,死の自己決定意識の形成には社会保障制度,宗教等に基づく価値観,利用可能な医療制度が強い関わりを持っており,現在は自己決定の選択が認められる部分が増えつつも,多様な意識が存在している可能性が示唆された。 それを踏まえ,次に死の自己決定意識の実態をWEB調査を利用して探索的に明らかにした。WEB調査会社を通じて,一般成人312名(20代~60代)に,死の自己決定意識に関する質問6項目(4件法)と上記の項目に回答した理由(自由記述)を回答してもらった。その結果,年齢が若いほど死の自己決定に対して肯定的であることが示された。今後,これらの態度の形成に影響する要因を検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した通りに研究を進めることができており,現在のところ問題は生じていない。平成25年度に実施した研究についてはその成果を平成26年度に学会発表する予定であるが,そこで他の研究者からのフィードバックを受け,さらに必要な検討点等があれば,それらを踏まえた追加研究などを行うなどする必要はあると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,今年度得られた結果をもとに,客観的に死の自己決定に対する意識を測定することができる「死の自己決定意識尺度」を作成したいと考えている。それを用いて,死の自己決定意識に影響を与える諸要因との関連を客観的に示す予定である。研究開始前は,死生観や自己決定欲求などの個人内変数を中心に考えていたが,今年度の調査結果から他者との関係の持ち方が強く影響している可能性が示されたため,ソーシャルサポートやソーシャルキャピタルなどの対人的要因についても視野を広げて検討して行きたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画当初はアンケート調査を研究協力者の所属機関または関連機関で実施することを考えていたが,実際には広く迅速にデータを収集するためにウェブ調査会社を通じた調査を行ったため,調査手数料が発生した一方で,調査旅費やデータ入力費用がかからずに済んだためと考えられる。 次年度もウェブ調査を行う予定であるが,次年度は研究成果を発表するために学会に参加する予定があり,その際に共同研究者も同行するための旅費の増加が見込まれるので,そこで使用する予定である。
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