本研究は,これまで死生学,倫理学等の領域では多くの議論がなされてきた「死の自己決定」について,心理学的なアプローチから実証的に検討することを目的とした。平成25年度の研究結果より,死の自己決定に対する態度には発達的変化があること,対人関係の在り方が影響を与えている可能性が示唆された。そして平成26年度には,20代から60代の一般成人を対象とした「死の自己決定意識尺度」の作成を試みた。その結果,「否定的態度」,「条件付き肯定的態度」,「肯定的態度」の3下位尺度から成る尺度が新たに作成され,その信頼性及び妥当性が確認された。そこで,本年度は死の自己決定意識と対人関係のあり方や健康度等との関連,ならびに,個人の認知的特性や健康観等との関連を明らかにすることを目的とした。 まず研究1では,一般成人200名(20~60代)を対象に,①死の自己決定意識尺度,②信仰の有無,③主観的健康度,④ケガ,病気の経験の有無,⑤主観的幸福感,⑥精神的健康度(K6),⑦ソーシャルサポート,⑧ソーシャルキャピタル,⑨援助要請スタイルからなるWebアンケートを実施した。その結果,家族からのサポートが死の自己決定意識と関連があることが示された。 研究2では,一般成人200名(20~60代)を対象に,①死の自己決定意識尺度,②批判的思考態度,③Health Locus of Control,④Perceived Health Competence,⑤セルフヘルプ志向性,⑥自律性欲求,⑦本来感からなるWebアンケートを実施した。その結果,知覚された健康の自信と本来感が死の自己決定意識に対する否定的態度と関連性を示した。
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