本研究は、トレーナーが小・中学校におけるスポーツによるケガの応急手当や予防対策などの指導を導入して、学校や医療機関との連携によるスポーツ医科学サポート体制の構築をめざすものである。 初年度の取り組みでは、学校現場の指導者とのヒアリングをしていく中で、部活動の活動規模や指導者の考え方で応急処置や傷害予防に関する意識も大きく異なることから、学校現場の特徴を十分に考慮した上で適切なトレーナー(スポーツ医科学の専門家)の介入を行う必要があることがわかった。 2年目の取り組みでは、本研究の事業内容が平成28年度から導入される運動器検診の体制と深く関連することから、医師との連携の必要性を考慮し、その領域の専門家を招いたシンポジウムを開催し、さらなる情報収集を行った。また、学校現場におけるスポーツ傷害の対応に関する実態をより精細に把握し、現場においてより必要性の高い対応策を検討する目的で東京都内の中学校教員を対象としたアンケート調査を実施した。 3年目の取り組みでは、学校現場におけるケガに対する教員の対応の課題について検討することを目的に、実態調査の結果報告をもとに現場の教員を交えたシンポジウムを開催した。現場の教員がケガの応急処置などの救急対応や予防のためのコンディショニングに関する情報が不足し、対応に自信がないという傾向が強いことが明らかであったことから、現場の指導者に最低限必要なケガの応急処置や予防対策に関する情報を伝える配布用リーフレットを作成し、東京都内の学校関係者に郵送配布した。 学校現場における子どものスポーツ傷害の対応は、最も現場で子どものケガの対応に携わる可能性の高い教員が、トレーナーや医療機関等の専門家と連携しつつも、まずは必要最低限の応急処置やコンディショニング法等の知識や実践方法を学び、安全な指導を行える体制を普及・強化していくことが優先課題と考える。
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