学校教育のアカウンタビリティを明示するよう要請する声が一段と高まっている。そのような状況の中、学校体育はどのような成果を示してきたのだろうか。正課の教育課程に示された内容は、どの程度、子供たちに習得されているのだろうか。このような問題状況の下、本研究では、現行の小学校学習指導要領に示された技能、態度、思考・判断の内容の習得状況を把握する方法を開発し、小学校における「体育の学力」実態を明らかにしようとした。 3年間の研究期間をかけて、技能については主に実技調査(小学校第4学年は、体つくり運動領域「多様な動きをつくる運動」、器械運動領域「マット運動」「鉄棒運動」「跳び箱運動」、ゲーム領域「ゴール型ゲーム」「ベースボール型ゲーム」、小学校第6学年は、器械運動領域「鉄棒運動」「跳び箱運動」、陸上運動領域「走り高跳び」、ボール運動領域「ベースボール型」を対象)、態度及び思考・判断、加えて技能についての「できるようになるための知識」について、児童はどの程度理解しているのかを知るためのペーパーテスト及び意識調査を作成した。現在の学校体育の考え方を踏まえて、小学校第4学年と第6学年の児童を対象に、実技調査については各運動約100名、ペーパーテスト及び意識調査については約1100名を対象に実施した。 分析の結果、特にペーパーテストについては、4年生の正答率が約78.0%、6年生が約73.0%であることが確認された。本研究の結果から、現行学習指導要領の内容の7割以上について児童が理解している現状が示されると同時に、指導の状況あるいは児童の習得度の高低についても、一定の知見を得ることができた。 エビデンスを基にした教育論議が活発化する中、本研究で適用した方法論は、今後の学校体育の成果検証の方向性に示唆を与える意義ある取り組みとなったと考えている。
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