研究課題/領域番号 |
25560319
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
近藤 徳彦 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70215458)
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研究分担者 |
近江 雅人 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60273645)
井上 芳光 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70144566)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 汗の成分 / 発汗効率 / 熱中症 |
研究概要 |
暑い環境下で運動を実施すると体からの熱放散が制限され,体温が過度に上昇し,この上昇が熱中症を引き起 こす.この予防には暑い環境下で熱の放散に役立つ発汗機能を向上させることが不可欠である.発汗機能の改善には発汗量の増加と汗に含まれている塩分濃度の低下があり,効率の高い汗には後者の改善が欠かせない.そこで,本研究では汗塩分濃度の変化を連続的に測定することで,発汗機能改善を評価できる斬新な方法を確立する. 平成25年度では皮膚電気抵抗-発汗量の関係を明らかにし,この関係により汗腺の塩分再吸収能力が評価できるのかどうか検討した.環境条件は気温28°C・相対湿度50%に設定された環境制御室内で,健康な男子学生を対象に温熱負荷(スーツでの加温)を50分間実施した.被験者は短パンのみを着用し,前腕と胸の皮膚電気抵抗・発汗量・皮膚温,体温と して舌下温,心拍数および血圧を連続的に測定し,温熱負荷中の皮膚電気抵抗-発汗量の関係を部位毎に算出した.皮膚電気抵抗-発汗量の関係から変曲点がはっきりみられる者とそうでない者があった.両関係は部位によって大きな変化はなかった.これは今回の被験者において前腕と胸の発汗量に大きな差がなかったことが考えられる.皮膚電気抵抗-発汗量の関係から算出した変曲点の値はこれまで別の方法で算出されたもの(Smansuddin et al. 2005)と比較して大きな違いはなかった.このことから,今回測定した皮膚電気抵抗-発汗量の関係から汗腺の塩分再吸収能力はある程度評価できることが明らかとなった.しかし,変曲点が算出が被験者によって難しい点など課題が残された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り実験が実施でき,また,予測していた結果も概ね得られた.しかし,以下の課題が残された点が今回の達成度にした理由である. 1)身体の部位により皮膚電気抵抗-発汗量の関係の違いがみられなかった.今回の被験者の発汗能力に大きな部位差がなかったことが原因と考えられるので,事前の確認が必要であった. 2)予想していたより,皮膚電気抵抗-発汗量の関係の変曲点が分かりにくい被験者が居た.なぜ,そのようになるのか原因を検討する必要がある. 3)実験の進捗状況から,研究成果を学会で発表することができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究結果から,前述したように皮膚電気抵抗-発汗量の関係の変曲点が分かりにくい場合があることが分かった.これは皮膚電気抵抗が汗の塩分濃度のみでななく,皮膚の状態,皮膚の血流量,あるいは電気抵抗を測定する電極の種類,電極間距離などか関係している.これらの要因を検討し,皮膚電気抵抗-発汗量の関係の変曲点が汗の塩分濃度により影響されるような方法を検討する.また,汗の塩分濃度を他の方法で測定し,それとの比較から今回の方法の妥当性を検討する.これらの課題の解決も含め,平成26年度の研究を遂行する.なお,これらの検討においては国内外の学会等での資料も参考にする.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果を海外の学会で発表する予定でいたが,研究結果の方法,解釈に課題が生じた.また,当初予定した温熱負荷装置一式の価格が高くなかった. 今年度は研究に関する資料収集,国内外での研究成果発表ならびに平成25年度の研究課題解決のために,汗の塩分濃度を測定する他の方法の応用などに繰越の費用を利用する予定である.
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