地域スポーツクラブ会員および非会員の地域住民が構成している社会的ネットワークを把握し,地域スポーツクラブを結節点にした社会的ネットワークを,従前からの地域生活のネットワークとの重複性に着目して,その固有性を理解した. その結果,地域スポーツクラブ固有のネットワークは,行政区画を超えて拡がるところに特徴があり,地域スポーツクラブを結節点にした生活圏内のネットワークは,地域生活のネットワークと重複していることが明らかとなった. 発見事実から,地域スポーツの社会的価値は,生活圏を超えるネットワークを構成することと,諸々の地域生活のネットワークが重なり合う受け皿になることと理解された. これまで,スポーツによるコミュニティ再生の可能性について議論が展開されてきている.その到達点は,スポーツの力だけでコミュニティが再生されるのではなく,スポーツを通じて醸成された連帯意識が他の生活局面に拡大・波及したり,あるいは生活のつながりがスポーツを通してより密になったり拡がったりすることが必要であるという認識にある.しかし,それらの論説は実証されていない.本研究は,スポーツには多様な生活のつながりを内包しうる可能性があることと,そのつながりに新たな知を取り込みうる可能性があることを実証した.この成果は,今後の地域スポーツ振興のビジョンと方策を導くための一助となるだろう. しかしながら,本研究はケーススタディであり,仮説としての可能性を示したに過ぎない.今後は,ネットワーク研究の知見を取り入れた大規模な実証研究が求められるだろう.
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