研究実績の概要 |
車椅子ユーザーのスポーツ活動中の身体活動量の定量的測定と適切な運動処方についての知見は非常に限られている。本研究はスポーツ用車椅子を利用した運動中の身体活動量の定量的評価方法の基礎的検討を目的に、車椅子に加速度計を取り付けた計測方法の開発を行うことを目的とした。 これまでに、ワイヤレスモーションセンサー(加速度、角速度、ジャイロの測定が可能)、心拍計、呼気ガス分析器の同時計測システムを行った、それらを用いて、被験者15名を対象に、車椅子バスケットボール競技用車椅子を用いて20mの走路を3種類のスピードで走行した際の、加速度データ、心拍数、分時酸素摂取量、の各データを取得した。加速度データは車椅子に取り付けた加速度計(以下、車椅子加速度)と体幹背部に取り付けた加速度計(以下、体幹加速度)の2種類のデータを取得した。 車椅子加速度と体幹加速度の級内相関係数ICC(2,1)は0.706(P=0.001)と比較的高い一致度を示した。運動中の車椅子加速度のデータ、体幹加速度のデータそれぞれと心拍数との相関を見たところ、重相関係数R、決定係数R2ともほぼ差がなかった(車椅子加速度R=0.548、R2 =0.300;体幹加速度R=0.542、R2=0.298)。さらに、加速度のデータと身長、体重、年齢、安静時心拍数を説明変数として、運動中の平均心拍数と平均分時酸素摂取量を従属変数とした重回帰分析を行った。有意な予測式は得られたものの、20mシャトルランテストでの実測値と予測式を用いて算出した値を比較すると差が大きく、運動強度が高い運動課題では今回の基礎データから得られた一次回帰式による予測は適切でないことが示唆された。 今回の結果から、車椅子に取り付けた加速度データは、運動中の心拍数との間に相関関係があり、トレーニング強度の評価や運動処方に際して有用なデータとなりうることが示唆された。
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