研究課題/領域番号 |
25560328
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北翔大学 |
研究代表者 |
川初 清典 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 教授 (80026822)
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研究分担者 |
山本 敬三 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 准教授 (00405698)
竹田 唯史 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 教授 (10320574)
晴山 紫恵子 北翔大学, 北方圏生涯スポーツ研究センター, 研究員 (30228671)
横山 真太郎 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 教授 (90002279)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | クロスカントリースキー / グリップゾーン / スリップ抑止 / 鮫皮 / 擦動試験 |
研究概要 |
クロスカントリー(C.C.)スキーには山岳登行に典型であるが海獣の毛皮をシール加工し板滑走面に装着する後方スリップ抑止手法がある。主にはワックスで気象の多様性に対応するがその選定判断やワーキング技術は困難が極まっている。C.C.の競技スキーでも、市民の愛好スキーでも、前方滑走性を担保する簡易且つ有効な気象万能型後方スリップ抑止・制動機構を要している。冬季スポーツを標榜する北海道の重要な課題であり、本研究は、鮫皮の薄地・軽量構造、軽装備性、鱗表面性状の低乱流摩擦抵抗(滑走性)、鱗機構のスパイク性能と堅牢性に着眼して鮫肌の鱗構造をシールに活用し、キック動作時にそのスパイク機能によるスリップ防止を得て全キック力を推進に活かす走行を可能にせんとした。 鮫を捕獲して剥皮の後「タンニンなめし」及び「ウレタン塗布」等の処理を施してシール加工した。そして市販のC.C.スキー板を整形してシールを貼付けて鮫鱗皮製グリップゾーンプロトタイプを試作した。 考案プロトタイプの滑走性や制動性を定量試験するために擦動装置を製作し試験した。擦動圧は擦動板がスキー板のアーチベンド構造上を移動するのに際して15±5kg(範囲)、擦動頻度は1cpsで負荷し、1、2、及び3擦動時間目に滑走・制動・劣化を試験した。滑走性では綿布帯をゾーンに置いて5kgを荷重し鱗配置の整流方向に牽引してその摩擦力を計測した。3擦動時間まで初期値が維持された。制動性の計測では綿布帯をゾーンに置いて布面に鱗を喰い込ませ滑走性の計測とは逆方向に牽引した。その耐牽引力で評価した。制動性では擦動前および1擦動時間で80kg超、2擦動時間で80kg、3擦動時間で52kgとなった。 結論 鮫鱗皮製グリップゾーンデザインのC.C.スキーへの応用可能性を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目的である鮫鱗皮の確保、なめし処理、それをクロスカントリースキー板滑走面のグリップゾーンへ装着したプロトタイプの製作、その試作品の耐劣化(擦動)試験をおおむね順調に遂行できた。 先ず、1)国内および大洋州から各種・各様の鮫皮を収集し、上記のプロセスを進めた。擦動試験用に、電動型の頻回反復型摩擦装置を組み立て、滑走性能とその低減性を定量試験した。同時に堅牢・磨耗性をも評価した。そしてプロトタイプがグリップゾーン加工の応用に可能との結果を得た。 次いで、2)鱗皮シール内面の平滑化・強靭化加工のために皮革と製品製作の業者に方法確定・加工作業を発注し本研究に要するシール材料の確保を確実にした。また、3)グリップ機能・滑走機能性の雪上計測では最適な面積・形状を初期的に決定する計画であったが融雪期の雪性状にさしかかり実滑走試験まで進めたが、鮫皮の最適形状を決定するまでには至らなかった。同様に、4)グライドワックスや不凍液の鮫鱗皮シール表面への併用による滑走性補完、着雪・凍結防止の効果を計測・評価する計画であったが雪環境に恵まれず計画を次年度に実施することとした。 5)鮫鱗皮シールの作製とそのグリップゾーンのスキー板の試作、グリップ性能の耐久試験では構想のスキー板を試作し雪上実走時の滑走性をキック後の滑走距離で評価し結果を得た。力に見合う荷重をスキー板に負荷し雪上下り斜面方向へ滑らせてシールの滑走・グリップ性能を評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1)試作スキー板で実走試験しグリップ機能・滑走機能双方の性能を判定・評価・決定する。各様の雪面性状の野外コース上にて経験者で試用試験し、従来型のワックスタイプ着用の実走結果と比較し計時成績を得、内省評価を得る。不具合な指摘点を改善する。そして従来の性能試験を加重して不具合の改善を確認する 2)スキー実走による鱗の堅牢・磨耗性の確認を行う。各様の雪面性状の野外コース・スキーコース上にて長時間の試用試験をし、鱗の剥離劣化などが始まるまでの経過を観察・記録する。必要に応じて樹脂接着剤などで剥離予防の工学的改善を施し再試験する H27年度には: 板プロトタイプを製作、レース応用し性能を判定・評価する。 製作技術者に発注して、レース用の高品位クロスカントリースキー板を加工し本構想のプロトタイプ10組を製作する。競技シーズンに、競技者10名に数回実レース応用し性能を内省調査法で判定・評価する。出される不具合な点を検討し改善を講ずる。そして、従来の性能試験を加重して不具合の改善を確認する。トレーニング応用をも試みる。板プロトタイプの利用によるトレーニング応用実験を行い、有効性の観点から動作やフォームなどの変容の様子をも調べる。できればプロトタイプの製品化、そのトレーニング・レース応用を目指す。そしてトレーニングやレースへの応用試験を行って有効性を確認・評価する。製品化できない場合、不具合な点を抽出し改善加工・改善効果確認をする
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次年度の研究費の使用計画 |
北海道冬・春期の残雪状況が例年より早期に後退し、それが鮫鱗皮装備のプロトタイプ製作行程よりも早く起こり、予定の雪上実走試験ができなくなって次年度使用額が発生した。 本研究の全体計画の中で、考案スキーによる雪上実走試験は本年度に主力を置いており、本年の事業に連携させて前年度分の繰越額を使用する予定である。
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