研究課題/領域番号 |
25560330
|
研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
鈴木 崇人 神奈川大学, 人間科学部, 非常勤講師 (20638960)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 筋シナジー / 下腿三頭筋 / 大腿四頭筋 |
研究実績の概要 |
ヒトの各筋の活動は独立ではなく、同時に活動する小規模な組合せ(筋シナジー)が存在するとされており、より現実的にヒトの動作を推定するシミュレーションを行うには、これらを考慮する必要がある。しかし、近年、ヒトの随意運動に対する筋シナジーの関与を否定する研究もあり、筋シナジー仮説を再検討する必要がある。本研究の到達目標は、筋シナジーを用いてヒトの現実的な筋活動を再現したシミュレーションを可能にすることであるが、1年目の研究を継続し、随意運動における筋シナジーの関与を明らかにするために、等尺性足底屈中の下腿三頭筋に対する膝伸展筋群の活動の影響を詳細に検討した。また当初2年目に計画していた等速性収縮中の下腿三頭筋に対する膝伸展筋群の活動の影響を検討するための実験設定を決定するための予備実験を行った。 下腿三頭筋と膝伸展筋群の活動の関係について、30条件(足底屈強度10条件×膝伸展強3条件)において検討した。3年目では解析方法を変更し、折れ線回帰や非負値行列分解ではなく回帰分析を用いることとした。 前述の研究で、高強度の足底屈では膝伸展との同時動作中に腓腹筋内側頭とヒラメ筋の活動が増加することが明らかになり、この現象から筋シナジーの動員が随意最大努力時の足底屈トルクと関係している可能性が示唆された。2年目に実験を再度行い、まとめたものはJournal of Strength and Conditioning Researchに受諾された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1年目の研究を継続し、等尺性収縮時の下腿三頭筋の筋活動を回帰分析により解析した。折れ線回帰から足底屈強度によって筋シナジーの動員様式が変化することが明らかになっていたが、被験者ごとに筋シナジーの動員様式が変わる足底屈強度が異なるため、折れ線回帰では被験者に共通する一般性を抜き出すことが難しかった。また必要な筋シナジーの数を非負値行列分解により決定していたが、決定するためには閾値を任意で設定する必要があり、任意性により結果が影響を受けていた。このため、筋シナジーの数も回帰分析から決定するように変更した。以上の研究は国際誌に投稿準備中である。高強度足底屈に焦点を当てた実験の結果は国際誌に修正投稿中である。以上のことから、1年目の予定を足底屈と膝関節伸展の関係に限定したものの、目標は概ね達成できた、と考えられる。 当初の2年目の研究対象である動的な運動については予備実験を行っている段階である。これまでの研究から、足底屈筋群の活動は膝伸展筋群と同時に活動するかどうかで大きく変わり、その現象は足底屈筋群に関わる筋シナジーの切替として捉えられた。この筋シナジーの切替は足底屈強度が低い時に顕著にみられたため、動的な運動として低強度等速性足底屈運動を対象とし、等尺性足底屈と等速性足底屈における筋シナジーの動員を比較している。しかし、等速性足底屈において足底屈トルクと膝伸展筋群の活動を同時にコントロールすることは困難であり、被験者を十分に習熟させることとプロトコル自体を簡単にすることが必要であることが確認された。また筋活動は関節角度の変化の影響を大きく受けるため、関節角度をゴニオメータにより確認することが重要であるが、足関節の固定とゴニオメータの貼付を両立させることは困難であり、小型のゴニオメータを用意した。以上のように、2年目の予定だった研究は予備実験をほぼ終えた段階である。
|
今後の研究の推進方策 |
4年目は、当初2年目に予定していた動的な運動における筋シナジーの動員の研究を、低強度等速性足底屈を単独で行った場合と膝伸展と同時に行った場合を対象にして行う。等速性足底屈の実験では等尺性足底屈での実験のように膝伸展筋群の活動を同時に正確にコントロールすることは困難であるため、膝伸展筋群の活動を特定の値に維持させることは断念し、最大随意収縮時の50%を閾値として、その閾値を超えた場合と超えない場合で筋シナジーの動員を比較する。さらに等尺性足底屈と等速性足底屈時の筋シナジーの動員を比較する予定だったが、実験条件で確認された筋シナジーの日常動作での動員を確認するために歩行時の筋活動も測定することを検討している。また小型のゴニオメータを用意したが、足首を強固に固定しているため貼付する場所が狭いため、狭い場所でも強固に貼付できるよう加工する。 最終的にシミュレーションの対象として跳躍動作を想定していたが、跳躍動作は高強度であり、足底屈筋群の筋シナジーの動員の切替が顕著に表れるのは低強度足底屈であるため、対象を低速度の歩行に変更することも検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
1年目後半から3年目の研究に対して、論文2編を準備していたが、未だに受理されておらず、4年目に論文掲載料や英文校正費を残すことになった。当初2年目に予定していた動的な運動に対する実験も本格的には始まっておらず、被験者謝金などのために残している。
|
次年度使用額の使用計画 |
1年目後半から3年目の研究成果を発表するために、英文校正を数回、論文掲載料を2回以上支出することを予定している。また当初2年目の予定だった動的な運動を対象とした実験のために被験者へ謝金を用意する。
|