ヒトの各筋の活動は独立ではなく、同時に活動する小規模な組合せ(筋シナジー)が存在するとされており、より現実的にヒトの動作を推定するシミュレーションを行うには、これらを考慮する必要がある。しかし、近年、ヒトの随意運動に対する筋シナジーの関与を否定する研究もあり、筋シナジー仮説を再検討する必要がある。本研究の到達目標は、筋シナジーを用いてヒトの現実的な筋活動を再現したシミュレーションを可能にすることであるが、1年目の研究を継続し、随意運動における筋シナジーの関与を明らかにするために、等尺性収縮中の下腿三頭筋の活動に対する膝伸展筋群の活動の影響を詳細に検討した。また当初2年目に計画していた等速性収縮中の下腿三頭筋の活動に対する膝伸展筋群の活動の影響を検討するための実験を行った。 等尺性収縮における下腿三頭筋と膝伸展筋群の活動の関係について、30条件(足底屈強度10条件×膝伸展強度3条件)において検討してきた。4年目では、3年目に筋シナジー解析として採用した回帰分析の妥当性を検証し、研究成果をまとめた。 等速性収縮中の下腿三頭筋の活動に対する膝伸展筋群の活動の影響を明らかにするために、最大随意収縮の20%の強度での足底屈筋群の等速性収縮を足関節角速度10度毎秒で行い、足底屈筋群を単独で活動させる場合と膝伸展筋群の活動を同時に行う場合で筋活動を比較した。それにより、等尺性収縮の場合と同様に動的な運動においても、膝伸展筋群と同時に活動させる場合に下腿三頭筋のために動員される筋シナジーが切り替わるかどうかを検討した。さらに収縮様式として短縮性収縮と伸張性収縮を用意して比較し、収縮様式に関わらず動員される筋シナジーが同一であるかどうかを検討した。
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