研究課題/領域番号 |
25560332
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
辰巳 智則 畿央大学, 教育学部, 准教授 (30441447)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心と身体の臨床モデル / スポーツ傷害受容 / 全人的回復 / アスレチック・リハビリテーション / 情動調整行動 / ソーシャルサポート |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、スポーツ傷害受容を中核に据えた臨床モデルを質問紙法に基づく調査により実証的に検討することにある。この目的に対応する具体的な検討課題として、傷害受容を心理査定する観点の抽出(課題1)、傷害受容を左右する個人変数と状況変数の同定(課題2)、傷害受容を促す心理社会的支援の検討(課題3)、傷害受容プロセスがリハビリテーション行動とその成果に及ぼす影響過程(臨床モデル)の総合的検証(課題4)、の4点を申請時に掲げた。 平成26年度はまず、前年度に実施した課題1の研究成果である「傷害受容プロセス」の詳細をスポーツ医学系の国際学会にて報告した。なお、この学会での報告を含む論文1本及び関連論文1本が理学療法学系の国際誌に掲載された。次に、同じく前年度に取り組んだ課題2の関連研究の成果を行動医学系の国際学会にて報告した。この報告では、課題1で明らかにされた「傷害受容プロセス」の構成要因に影響する個人変数として情動調整に関わる特性に着目する有効性が示唆されたものの、ここで扱われた情動特性と傷害受容プロセスとの関連性を十分に証明するには至らなかった。 上述を受け、結論として、情動調整に関しては、研究対象がリハビリテーション期間に採用した「自己の情動調整行動」を個人変数とし、「他者から受領したソーシャルサポート」を状況変数として取り上げ、双方の相互作用を加味した観点から、傷害受容プロセスとの関連を検討するのが妥当と判断した(課題2)。そこで、新規に両変数を捉えた尺度を含む質問紙を作成し、質問紙調査を国内の学生競技者を対象に実施した。平成27年度には、課題2に関連する研究報告を心理学系及びスポーツ心理学系の国際学会にて行う予定である。なお、この調査に先立つ質問紙作成の過程では、ソーシャルサポートの構造を検討したパイロット研究をスポーツ心理学系の国際学会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度のスタート時、傷害受容の心理プロセスがアスレチック・リハビリテーション行動に及ぼす影響過程の検証を終えていた。申請時に提示した臨床モデルの根幹部分が妥当と判明されたことから、年度早々から傷害受容プロセスに影響を及ぼす先行因(個人変数と状況変数)の検討を可能にしていた。また、情動調整に関する特性要因として計画当初に仮定していた変数のもつ効力の是非に関しても、前年度の取り組みから半ば明瞭になっており、この検討を容易にした。個人変数としての情動調整を特性の視点からではなく、リハビリテーション期間に採用していた情動調整行動の実態から捉え、受領していたソーシャルサポートの実態を状況変数に同定し、双方の相互作用が傷害受容プロセスに及ぼす影響過程を検証するという代替案(課題2)の成立をみた。この代替案により、課題3「傷害受容を促進させる心理社会的支援の検討」は課題2に吸収された。なお、既に平成26年度内にこの課題に接近することを目的とした質問紙調査や分析を済ませており、成果の一部を平成27年度の学会にて報告する計画にあり、成果の全容に関する論文に関しても現在、執筆しているステージにある。 一方、今年度に計画していた訪問インタビュー調査に関しては、大きな進展をみることができなかった。当初、2名を対象とした訪問インタビュー調査を計画していたが、1名のみの遂行となった。定量的検討に定性的検討を加味することにより、立体的な情報を現場に提示できるものと思われ、この点に課題を残す。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請時の実施計画を概ね踏襲できているが、訪問インタビュー調査の遂行状況に課題を残している。2015年度は、課題2に関する定量的検討を推進し、この課題に絡む研究発表を2演題行う。加えて、課題2に関する総括的な論文を1本執筆する。また、課題2の論文を構成する2種類の研究(予定)を次年度に開催される学会のサブミッションにあてる予定である。 次に、初年度より積み重ねてきた論文及び研究発表をふまえ、課題4「傷害受容プロセスがリハビリテーション行動とその成果に及ぼす影響過程(臨床モデル)の検証」を総括的に行う。この総括に際し、元負傷競技者から得た質的情報を十分に加味できるよう心掛けたい。従って、このための訪問インタビュー調査を推進していく必要がある。
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