研究課題
本研究では、ヒトの筋細胞膜の特性を生体内で非侵襲的に評価する手法の開発を目指し、Multi-Frequency Bioelectrical Impedance Spectroscopy(MF-BIS)によって得られる信号情報のうち、Phase angleが最大となる周波数から求められるCapacitanceに筋細胞膜の電気的特徴が含有されていることを用い、MF-BISを用いて筋細胞膜の生物物理学特性の加齢変化を非侵襲的に評価する方法を開発することを目的とする。MF-BIS法では、交流電流の性質と、生体内の電気特性との関係から、Resistance成分とReactance成分が求められ、ベクトル平面図で電気的特徴を評価することができる。平成25、26年度には、MF-BIS法による筋細胞膜電気的特性が若齢者と高齢者、自立高齢者と要介護高齢者、心疾患患者の長期入院等の集団でどのように異なるかを測定・調査することを目的とし、多数例による比較を行なった。その結果、このような集団の電気特性プロットは、2次元平面上にきれいな広がりを持って分布することが明らかになった。このベクトル平面図上の値から、電気特性パラメータを得たうえで、筋細胞膜の生物物理学的特性を推定するモデルを作成した。一方、筋細胞膜は筋収縮に伴って形状が変化し、生物物理学的特性が変化する。そのため、平成26年度は、筋収縮中の電気特性をMF-BIS法で連続的に評価することで、筋細胞膜の生物物理学的特性との関連を明らかにすることを目的とした。先ず、漸増負荷等尺性力発揮運動においてMF-BIS法で計測した筋細胞内外液の変化および筋細胞膜の電気特性をResistance-Reactance平面にプロットし、電気特性パラメータを得たうえで、筋細胞膜の生物物理学的特性を推定するモデルを作成した。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は、MF-BIS法による筋細胞膜の電気的特性を検討するために、多数例データを得ることが大きな目的で研究を行った。MF-BIS法は、これまでの研究で使用しており、2,000名を超えるデータベースを構築している。平成25年度は、MF-BIS法に関する造詣が深い、従来からの共同研究者である山田陽介氏が海外共同研究者のUniversity of Wisconsin-MadisonのDale A. Schoeller教授のもとに1年間留学し、Schoeller教授による実験データの監修と討議を進め、氏の留学期間中に、MIDUS(Midlife in the United States, A National Longitudinal Study of Health & Well-Being)に参加し、20~80歳のアメリカ人約100名の測定を行い、人種比較も可能なデータベースの構築が進んでいる。さらに、筋細胞膜は筋収縮に伴って形状が変化し、生物物理学的特性が変化するが、これについては、平成26年度は、筋収縮中の電気特性をMF-BIS法で連続的に評価することで、筋細胞膜の生物物理学的特性との関連を明らかにする仕事にも着手できた。
今後は、漸増負荷等尺性力発揮運動においてMF-BIS法で計測した筋細胞内外液の変化および筋細胞膜の電気特性をResistance-Reactance平面にプロットし、電気特性パラメータを得たうえで、筋細胞膜の生物物理学的特性を推定するモデルを作成する。さらに、31P-MRS、DT-MRI、MRIのT2強調画像、近赤外線分光法(NIRS)、筋電図(EMG)・筋音図(MMG)、超音波画像、超音波ドプラーを用いて、電気特性パラメータと比較することで、その特徴を相互比較する。基礎研究は等尺性運動で行なうが、同時に、動作を伴う各種運動様式(コンセントリック・エキセントリック収縮、ダイナミックな反復運動)中・後の計測にもチャレンジする。現在、自転車運動中の測定を試みており、運動強度の増加に伴って変化するシグナルを捉えることができそうである。こちらについては、NIRS、EMG、MMG、超音波画像、動作解析との比較により相互妥当性を検証する。成果は国内外の学会で発表すると共に、論文として公表する。
学会旅費1回分として残った
本年度、体力医学会参加費量にあてる。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (31件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
日本セーフティプロモーション学会誌
巻: 17 ページ: 39-46
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http://www.kyotogakuen.ac.jp/news/11934.html