平成26年度は,膝前十字靱帯(ACL)再建術後の膝関節固有感覚(実験1)及び歩容の安定性(実験2)について縦断的に検証し,さらに運動学的観点からこれらに関連しうる大腿筋群の機能評価(実験3)を行った. ACL再建術後の運動部に所属する大学生選手を対象とし,競技復帰前(術後6カ月)と競技復帰後(術後12カ月)の時点において実験1及び2を行った.実験1では関節角度一致課題(規範となる脚に他方の脚を合わせる課題)を課し,①術後6カ月では両側の正確な膝関節位置の把握が困難であるが,②術後12カ月では健常群と同程度にまで回復する可能性が示唆された.また,実験2では歩容の安定性を検証し,①術後6カ月では両側脚の接地様式に力学的変化が起こるが,②術後12カ月では両側脚ともに安定した歩容が観察された.これより,ACL再建術者の下肢の両側性機能に関する新たな知見が明らかになった. さらに, 実験3ではACL再建術後の競技復帰時期の選手を対象に膝伸展筋群の機能評価を行った.結果,現在までに術側脚において最大筋力及び最大横断面積が低下する傾向が得られており,実験1及び2を引き起こす要因の一つである可能性が示唆されている. 本研究結果は,二次傷害予防を考慮した効果的なリハビリテーションの指針・立案の確立に不可欠な指標であると考えられる.このように,学術的研究(運動学)から臨床的研究(リハビリテーション学)への応用を一連付けた本研究は先見性のあるものである.
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