研究課題/領域番号 |
25560342
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
樋口 満 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (20192289)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エビデンスの確立 |
研究概要 |
本研究は、持久性アスリートが経験的に実施しているテーパリングが科学的根拠に基づく手法であることを明らかとするために、テーパリングと骨格筋エネルギー生産系との関連性について検証することを目的としている。研究開始初年度である本年は、実験動物を用いてテーパリングが持久力および骨格筋エネルギー生産系に及ぼす影響を検討した。 実験にはSprague Dawley系雌ラットを用い、コントロール群、運動継続群およびテーパリング群の3群を設けた。運動継続群には9週間のトレッドミル運動を、テーパリング群には7週間の運動後に運動時間を半減させたトレッドミル運動を2週間負荷した。実験期間終了後、持久力を測定するために疲労困憊運動を実施し、その直後に解剖して各エネルギー生産系酵素の評価を実施した。 実験の結果、テーパリング群の運動継続時間はコントロール群と比較して有意に高い値を示した一方で、運動継続群とテーパリング群との間に有意な差は認められなかった。また、ヒラメ筋におけるエネルギー生産系酵素のタンパク質発現量および酵素活性も同様に、テーパリング群はコントロール群と比較して有意に高い値を示し、運動継続群とテーパリング群との間に差は認められなかった。 これらの結果から、持久性運動におけるテーパリングは一時的なトレーニング量の減少を伴うにも関わらず、持久力および骨格筋エネルギー生産系酵素の発現量および酵素活性に悪影響を及ぼさないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、テーパリングによる持久力保持効果のメカニズムとして骨格筋エネルギー生産系のタンパク質および酵素活性が維持されるという重要な知見を得ることができた。 しかしながら一方で、ヒトを対象としたテーパリング効果を検討した先行研究においては持久力の向上作用が認められていることから、本年度に用いた実験条件ではテーパリングによる持久力向上作用を全て明らかにできていないと考えらえる。 これまでに得られた知見を参考にして、今後、より厳密なテーパリング条件を検討していくことによって、テーパリングに関する更なるエビデンスを構築する必要性があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験課題においては、テーパリングが骨格筋エネルギー生産系に及ぼす影響を明らかとするために極端な運動条件(運動時間の半減)を用いた検討を行ってきた。 今後、運動時間の段階的な減少や、栄養摂取と関連付けるなどより実践的なテーパリング手法が持久力および骨格筋エネルギー生産系へ及ぼす影響を検討することで、テーパリングにおける新たな知見を獲得していく必要性があると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はテーパリングに関する基礎的な情報を収集するために、比較的安価な方法を用いた解析を実施してきた。これまでの成果によりテーパリングが骨格筋エネルギー生産系に及ぼす全体像を明らかとすることができたことから、今後、より詳細かつ高度な解析を実施していく必要があると考えられる。 次年度は、テーパリングが骨格筋エネルギー生産系に及ぼす影響を網羅的に明らかとするために、これまでと比較してより多くの検討条件ならびに解析項目を設けた実験を実施する。 本年度主に検討したテーパリングと糖質の代謝に関わる酵素に関する指標との関連性だけでなく、脂質代謝など他の代謝経路も含めた包括的な検討を行う予定である。
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