研究課題/領域番号 |
25560343
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小笠原 理紀 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (10634602)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 運動 / レジスタンス運動 / 細胞外マトリックス / マトリックスメタロプロテアーゼ / 筋肥大 / タンパク質代謝 / シグナル伝達 / mTOR |
研究概要 |
近年、細胞外マトリックスの構成成分を分解することで細胞外マトリックスの代謝を司るマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)が骨格筋量や筋線維タイプの調節に関与していることが明らかとなっている。本研究は、MMPsのなかでも主に基底膜の4型コラーゲンの分解を担うMMP-9に注目し、MMP-9が運動による骨格筋肥大に関与しているのか否か明らかにすることを目的としている。 平成25年度はレジスタンス運動後のMMP-9の活性化とその調節機構についての検討を行った。 まず、Spraque-Dawleyラットを対象とし、レジスタンス運動後のMMP-9活性の経時変化について筋タンパク質合成に関与する複数のシグナル因子とともに検討した。その結果、レジスタンス運動は骨格筋において筋タンパク質合成に関与するタンパク質複合体mTORC1の活性化と同様に、MMP-9をタンパク質発現量の増加を伴って活性化させることがわかった。 次に、レジスタンス運動後に観察されたMMP-9活性化の調節メカニズムについて、レジスタンス運動によるmTORC1活性化を薬理的に阻害すること(ラパマイシンを使用)でMMP-9の活性化がmTORC1活性化の影響を受けているか否か検討した。その結果、レジスタンス運動によるmTORC1の活性化を阻害することで、MMP-9のタンパク質発現量の増加も完全ではないが抑制され、活性化応答も抑制された。したがって、レジスタンス運動によるMMP-9活性化の一部はmTORC1活性化によると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の主目的であったレジスタンス運動によるMMP-9の活性化とその調節機構(主にmTORC1活性化との関係)に関しては順調に検討を重ねることが出来た。また、今後予定している阻害剤を用いたレジスタンス運動によるMMP-9活性化を抑制した実験に向けた予備実験にも取り組むことが出来た。ただし、現時点で当初予定していた阻害剤でのMMP-9活性化の抑制が十分に行えておらず、その点は今後の検討課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はレジスタンス運動によるMMP-9の活性化がレジスタンス運動による筋タンパク質同化応答と関与しているのかどうか検討していく。それにあたってMMP-9活性化の抑制が必須である。しかし、現時点で当初予定していた阻害剤を用いた条件ではMMP-9の活性化抑制が不十分であることがわかった。今後は阻害剤の投与条件の検討、阻害剤の変更、ノックアウトマウスの使用、等を念頭に置いて早急に最適な実験プロトコルを作成し、運動による骨格筋適応におけるMMP-9活性化の役割について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費に関しては阻害剤を大量購入したために予定よりも安価で購入することが出来たため。 旅費に関しては参加予定であったExperimental Biology 2013への参加を直前のテロの影響でキャンセルしたため。 その他に関しては論文の英文校正と投稿・掲載料を計上していたが、投稿には至らなかったため。 阻害剤の条件検討が十分ではないため、次年度使用額を用いて阻害剤を追加購入予定である。 また、論文の英文校正と投稿・掲載料に使用予定である。
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