研究課題/領域番号 |
25560346
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研究機関 | 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター |
研究代表者 |
高橋 英幸 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学研究部, 副主任研究員 (00292540)
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研究分担者 |
有光 琢磨 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学研究部, 契約研究員 (00616021)
中嶋 耕平 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, メディカルセンター, 副主任研究員 (50292925)
大岩 奈青 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学研究部, 研究員 (50443247)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 磁気共鳴分光法 / クレアチンリン酸 / アデノシン三リン酸 |
研究実績の概要 |
骨格筋のアデノシン三リン酸(ATP)やクレアチンリン酸(PCr)といったリン酸化合物は、筋収縮のためのエネルギー産生で重要となる基質であり、その含有量が運動パフォーマンスに大きな影響を及ぼす。本研究では、これまで侵襲的な方法でしか行えなかったこれら化合物の濃度の評価を、新しい定量的リン磁気共鳴分光法(31P-MRS)を用いて測定可能とするとともに、リン酸化合物濃度と競技種目特性との関係を明らかにすることを目的とした。平成26年度は、前年までに確立させた定量的31P-MRS法を実際の競技者へ応用した実験を行った。陸上競技短距離走者12名、長距離走者10名および非鍛錬者9名を対象として、定量的31P-MRS法を用いて、右脚大腿部の筋グリコーゲン測定を行った。その結果、短距離走者のPCr濃度が他の二群よりも有意に高値を、ATP濃度が有意に低値を示した。長距離走者と非鍛錬者の間には差は認められなかった。さらに、短距離走者のPCr/ATP比も他の二群よりも高値を示した。以上のような短距離走者のより高いPCr濃度は遺伝的な要素とトレーニング効果の両方が、より低いATP濃度はトレーニング効果が主に関係していると考えられ、定量的31P-MRSによりこれらの違いを検出可能であることが示された。各リン酸化合物の個人差では、PCr濃度同様に、ATP濃度においても一定量の個人差があることが明らかとなった。さらに、リン酸化合物の相対含有量と絶対濃度との関係では、PCr/ATPとPCr濃度およびATP濃度両者との間に有意な相関が認められたが、ATP濃度との関係の方がより高い相関を示した。このことは、通常の31P-MRSを用いた測定において、ATP濃度を仮定して他のリン酸化合物濃度を算出したり、相対含有量を用いて評価を行う場合には、その結果の解釈には注意が必要になることを示唆している。
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