(研究の目的) 医療系専門職と市民・患者間のヘルスコミュニケーションにおける障害(情報・立場の非対称性など)を克服する一手法として「カフェ型ヘルスコミュニケーション」が注目されている。この対話型アプローチでは自由な雰囲気の中で対話がなされ、お互いから学びあう場となっている。しかしその参加者にどのような効果を及ぼすのか検証した報告は少ない。本研究では、カフェ型ヘルスコミュニケーションにおいて参加者に変容的学習プロセスが起きているかを測定し、学習の帰結(他者への理解、伝達的・批判的ヘルスリテラシーの向上、専門職側の患者・利用者への意識変容など)との関連を検討した。 (研究の方法) 計72項目からなる質問紙を作成し、2010年8月より2013年9月まで開催した「みんくるカフェ」関連企画、計33回の参加者357名を調査の対象とし、ウェブアンケート調査をメールにて回答依頼した。変容的学習に関する質問項目に関して、探索的因子分析、および確認的因子分析を行った。その後、共分散構造分析を行い、概念間の関連を検討した。 (研究の結果) 医療系専門職と市民・患者を含む141名より回答を得(有効回答率 39.5%)、変容的学習に関連する概念を共分散構造分析によって分析した。統合モデルの分析によって、対話において「多様な価値観と遭遇」したり「当事者のナラティブ」を聴くことで、参加者には「自己省察」や「パースペクティブ変容」などの変容的学習が起きていた。変容的学習プロセスは、直接「パースペクティブ変容」に至るパスと、「自己省察」から「混乱的ジレンマ」を経て「パースペクティブ変容」に至るパスが認められた。変容的学習の帰結として、「他者への理解」や、専門職の「患者・利用者への意識変容」が起きていた。また市民・患者においては主に「形成的学習」により「伝達的・批判的ヘルスリテラシーの向上」が起きていた。
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