研究課題/領域番号 |
25560350
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
川畑 徹朗 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (50134416)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | いじめ防止 / 環境づくり / ライフスキル / ヘルスプロモーション / レジリエンシー / 中学生 |
研究実績の概要 |
文部科学省は,近年のいじめ問題に対する社会の関心の高まりを受けて「いじめの防止等のための基本的な方針」を2013年10月に通知した。その特徴は,いじめの未然防止を重視している点にある。しかし,従来の我が国の学校におけるいじめ対策の重点は早期発見・早期対応に置かれてきたため,全ての児童生徒を対象としたいじめ防止の内容と方法に関する研究は,理論面でも実践面でも立ち遅れている。そこで本研究ではWHOの提唱するヘルスプロモーティングスクールの枠組みに基づき,いじめの起こりにくい「環境づくり」と「個人的能力の形成」を柱とする,中学生用いじめ防止プログラムの開発を目的とする。 平成26年度の具体的目標は,1)いじめが起こりにくい学校環境の評価ツールを開発し,その妥当性を検証すること,2)セルフエスティーム,ストレス対処スキル,意志決定スキル,対人関係スキルの形成を主な内容とする中学校1年生用のいじめ防止カリキュラムを開発することであった。 1)に関しては,いじめ防止にかかわる学校の体制づくり,学校の支持的な心理社会的環境づくり,学校いじめ防止基本方針の策定と実践,学校の保護的な物理的環境づくり,学校・家庭・地域社会の連携,いじめ防止にかかわる教育(個人的能力の形成)の六領域について学校環境を測定するツールを開発し,平成27年11月に伊丹市の中学校8校の校長を対象とした学校環境評価調査を実施した。また平成27年2月には,兵庫県,広島県,茨城県の中学校10校の校長を対象とした学校環境調査とともに,同10校の1年生を対象としたいじめの実態と関連要因に関する調査を実施した。2)に関しては,4時間から構成されるカリキュラムの教師用指導手引書と生徒用教材を完成した。 また,平成27年3月に,兵庫県伊丹市においてシンポジウム「学校におけるいじめ対策~未然防止に焦点を当てて~」を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
他の外部資金を獲得することができたため,平成27年度に予定していた学校環境調査といじめの実態調査を兵庫県,広島県,茨城県の中学校10校において平成26年度中に実施することができた。また,いじめ防止カリキュラムも完成し,予備的研究授業を行う体制が整った。 さらに,兵庫県伊丹市教育委員会の共催を得て,シンポジウム「学校におけるいじめ対策~未然防止に焦点を当てて~」を伊丹市において開催し,研究成果の中間報告を行った。県内外から123名の参加を得て,参加者とシンポジストの間で活発な意見交流を行い,いじめの未然防止の重要性と具体的方法について理解を深めるとともに,今後の研究の進め方について示唆を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
兵庫県,広島県,新潟県,茨城県の中学校1年生を対象として,いじめの実態と関連要因に関する縦断調査を実施する(平成27年6月と平成28年2月を予定)。また,同一校の学校長を対象とした学校環境評価調査を平成27年11月に実施する。 兵庫県などにおいて教師を対象としたワークショップを開催し,6月から12月にかけていじめ防止カリキュラムを新潟県,兵庫県,広島県の中学校で試験的に実施し,形成的評価を行う。 平成28年2月に兵庫県伊丹市においていじめ防止に関するシンポジウムを開催する。
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