研究実績の概要 |
本研究では,ヘルスプロモーティングスクールの枠組みに基づき,いじめの起こりにくい「環境づくり」と「個人的能力の形成」を柱とする,中学生用いじめ防止プログラムの開発を目的とした。平成27年度は以下の4点について取り組んだ。 1)中学1年生を対象としたいじめに関する縦断調査:2015年6,7月に,広島県福山市,兵庫県姫路市,伊丹市,茨城県鹿嶋市,新潟県新潟市の計9校の中学校1年生1,528名を対象として無記名の自記入式質問紙調査を実施した。その結果,セルフエスティーム,ライフスキル,ソーシャル・サポート感は,いじめ被害,いじめ加害及びいじめ目撃時の行動と密接な関係があることが明らかになった。また,2016年2,3月に,同一の生徒を対象として2回目の調査を実施し,現在その結果を解析中である。2)中学校長を対象とした学校環境評価調査:前述の中学校9校に加えて,兵庫県伊丹市の中学校6校,静岡県磐田市の1中学校,計16校の学校長を対象として,2015年11月から2016年1月にかけて,学校環境評価調査を実施した。現在は,1)の生徒調査の結果との関係を分析中である。3)中学1年生を対象としたいじめ防止プログラムの実施:1)の広島県福山市の1校,兵庫県姫路市の1校,新潟県新潟市の1校において,計6時間から構成されるいじめ防止プログラムを実施した。4)いじめ防止に関するシンポジウムの開催:2016年2月に,伊丹市「いたみホール」を会場として,シンポジウム「第2回 学校におけるいじめ対策~未然防止に焦点を当てて~」を開催した。兵庫県内外から約100名の参加を得て,活発な意見交流が行われた。
本研究の結果より,セルフエスティーム,ライフスキル,ソーシャル・サポート感を高めることが,いじめにかかわる行動に好ましい影響を与えるという理論的根拠が確かなものであることが示唆された。
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