研究課題/領域番号 |
25560351
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
清原 千香子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00169963)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 禁煙教育 / がん / 感受性遺伝子 / 喫煙 / 行動変容 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
本年度も、九州大学および福岡市内にあるF大学医学部において喫煙の健康影響や肺がん感受性遺伝子についての講義を行った学部生および大学院学生を対象に喫煙状況や遺伝子解析に対する考え方についての基礎調査を実施した。これまでに1084名の回答が得られた。現在喫煙者と過去喫煙者の割合はそれぞれ女性では1.36%と3.06%、男性では5.95%と7.72%であった。「非喫煙者に較べて、喫煙者は約10倍肺がん(扁平上皮がん)になりやすい」という知識を得た場合の喫煙継続の意志は、学年、学部(医療系か非医療系)、大学(九州大学かF大学)の間に有意差は認められなかった。遺伝的に喫煙感受性が高く肺がんになりやすい(肺がん高感受性)であると言われた場合にそのことを恐れやすさを算出した。学年、性、学部、大学を相互に調整した恐れやすさは、男性に対して女性は3.12 (95%信頼区間 (95% CI) = 2.14 - 4.57)、本学に対して他大学は1.59 (95% CI = 1.23 - 2.85)であった。遺伝的に喫煙感受性が高く肺がんになりやすい(肺がん高感受性)であると言われた場合、交絡要因を調整した禁煙しやすさは、男性に対して女性は3.86 (95% CI = 2.12 - 0.47)であった。大学、学部や学年は有意ではなかった。同様に、喫煙に対して肺がん低感受性と仮定された場合の禁煙しやすさは、男性に対して女性は 1.68 (95% CI = 1.15 - 2.47)であった。大学、学部や学年は有意ではなかった。つまり、女性の場合は男性に較べ、高感受性といわれることに怯え、感受性の高低に関わらず、禁煙しやすいという性差が認められた。今後、肺がん感受性遺伝子多型告知による禁煙教育では性差を考慮する必要性が示唆された。 また、基礎調査と平行して、遺伝子解析を行う研究の申請書を倫理委員会に提出しているが、許可はまだ得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、医療系学部学生において肺がん感受性遺伝子の遺伝子型を測定する必要がある。測定すべき肺がん感受性遺伝子の遺伝子型は決まっており、試薬も一部購入している。しかし、ヒトゲノム遺伝子解析研究倫理審査委員会において倫理審査をうけるべく申請書を提出しているが、学生が自分の遺伝子多型を知ることに恐怖を感じるからとの理由でまだ承認されていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度国民健康・栄養調査結果では、20―29歳の男性と女性の喫煙率はそれぞれ37.6% と11.7%であった。本調査対象者には未成年が含まれているが、匿名の調査のため、全員が喫煙状況についての質問に回答した。この国民健康・栄養調査の年齢層よりも本調査の年齢層は低いが、研究計画書作成時の予測値よりもはるかに低値であった。この理由として医療系学生であることが喫煙の影響の知識が一般人よりも高いためと考える。また、喫煙による肺がん感受性遺伝子が高感受性と言われた場合に、非常にその結果に怯えていることが分かった。前者に対する対応としては調査対象をさらに拡大し、後者に対する対応としては今後は遺伝子多型の測定をするので個々の学生に対して丁寧な遺伝カウンセリングが行えるような体制を構築していくことが必要と考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は本学のみで研究対象者が少ないため他大学に範囲を広げて基礎調査の実施を行った。 遺伝子多型解析に関わる人件費や試薬などの消耗品費の支出がなかったため、予算は次年度に繰り越されることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に繰り越される予算は、平成27年度に行われる遺伝子多型解析に関わる人件費や試薬などの消耗品費の支出に充当する。
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