本年度も九州大学および福岡市内にあるF大学医学部において喫煙の健康影響や肺がん感受性遺伝子についての講義を行った学部生および大学院学生を対象に喫煙状況や遺伝子解析に対する考え方についての基礎調査を実施した。これまでに1197名の回答が得られた。現在喫煙者と過去喫煙者の割合はそれぞれ女性では1.24%と2.80%、男性では5.83%と7.77%であった。「非喫煙者に較べて、喫煙者は約10倍肺がん(扁平上皮がん)になりやすい」という知識を得た場合の喫煙継続の意志は、学年、学部(医療系か非医療系)、大学(九州大学かF大学)の間に有意差は認められなかった。遺伝的に喫煙感受性が高く肺がんになりやすい(肺がん高感受性)であると言われた場合にそのことを恐れやすさを算出した。学年、性、学部、大学を相互に調整した恐れやすさは、男性に対して女性は3.10 (95%信頼区間 = 2.14 - 4.48)、本学に対して他大学は1.37 (0.98 - 1.91)であった。遺伝的に喫煙感受性が高く肺がんになりやすい(肺がん高感受性)であると言われた場合、交絡要因を調整した禁煙しやすさは、男性に対して女性は4.07 (2.25 - 7.37)であった。大学、学部や学年は有意ではなかった。同様に、喫煙に対して肺がん低感受性と仮定された場合の禁煙しやすさは、男性に対して女性は 1.68 (1.15 - 2.47)であった。大学、学部や学年は有意ではなかった。 遺伝子解析を行う本研究の申請書を倫理委員会に提出していたが、学生が自分の遺伝子多型を知ることに恐怖を感じるからとの理由で研究内容の変更を指示された。しかし、研究期間を1年間延長して本研究の目的から乖離しない研究計画を模索したが、納得できる研究計画は見つからず、倫理委員会の承認は得られなかった。
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