研究実績の概要 |
健康格差は日本における健康課題の一つであり、生活習慣病の重要な危険因子である身体活動不足や野菜摂取不足が社会経済的地位と関連あることを明らかにした。これらの社会経済的地位から起因する健康格差には信頼する健康情報の入手や理解能力であるヘルスリテラシーが重要な役割を果たしているとされている。そこで本年度は、ヘルスリテラシー向上を目的としたインターネット教材を開発し、その野菜摂取行動および身体活動の促進効果を検討した。 本研究の対象者は社会調査会社のモニターである30-59歳の男女1,500人であり、性別および世帯所得(300万円未満・300万円以上)に層化した後に無作為に介入群900人、対照群600人に割付を行った。介入プログラムとして、1回あたり5分程度で読了が可能なインターネット教材を全10回(野菜摂取行動編5回・身体活動編5回)の配信を行った。 主な評価項目は、ヘルスリテラシー、野菜摂取行動、身体活動量であり、評価時期は介入前、介入プログラム終了直後、介入プログラム終了3ヵ月後であった。本報告に示す統計解析は、世帯年収で層別して行った。 介入プログラムの閲覧者の割合は、世帯所得に関わらずプログラム初回で80%程度であったが徐々に低下していき、最終10回目には70%程度に低下していた。ヘルスリテラシーにおいては、世帯年収300万円未満において向上する傾向があったが、世帯年収300万円以上の群は変化が認められなかった。野菜摂取行動においては、世帯年収に関わらず野菜摂取量が1日あたりの200g以上の者の割合が増加していた。身体活動量においては、世帯年収に関わらず変化は認められなかった。 本研究で開発したインターネット教材は、ヘルスリテラシーの向上や野菜摂取行動の改善が一部認められた。今後はインターネット教材に関する感想を反映することで、インターネット教材の改善を行っていく。
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