カーボカウントは、食事に含まれる炭水化物量を把握し食後血糖の管理を行う食事指導法である。特に摂取する炭水化物量に応じて投与インスリンを決定する応用カーボカウントは1型糖尿病で有用なインスリン量の決定方法であり、アメリカ糖尿病学会はカーボカウントを標準的な食事指導法として推奨している。 しかし日本では、カーボカウントの概念が理解されるようになってきたのだが、治療方法として普及しているとは言いがたい状況にある。普及しない理由として、カーボカウントがある程度の知識と経験を必要とし、繰り返し指導を行う必要があり、患者だけでなく医療スタッフの理解が必要であることなどが推測された。 そこで、食事選択に対する柔軟性を広げ、小児1型糖尿病のQOLを改善することを目的に、患者および医療者へのカーボカウント導入を支援するスマートフォンやタブレット端末などの携帯情報端末用アプリを開発することを目指した。 インスリン治療を実際に行なっている小児1型糖尿病患者の患児と保護者を対象に、携帯情報端末の使用状況について調査を行ったところ、タブレット端末を常用しているものはなく、スマートフォンおよびiPod Touch用にアプリを開発した。さらに、通学中などのインターネットに接続できない環境(オフライン環境)でも使用できるように配慮し、クラウドだけでなくローカルでもデータベベースにアクセスできるように改良を実施している。当初の計画目標の二次目的であった、このような携帯情報端末アプリの使用が糖尿病治療の血糖コントロールを改善するのかについては、短期の検討では成績を評価できないため実施できなかった。また、科学研究費助成事業の終了以降もアプリの改善をアップデートを継続できるように、アプリ開発業者に依存しない開発環境を自前で用意することとし、データサーバーについても私費で運営継続を検討している。
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