研究課題/領域番号 |
25560361
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
欅田 尚樹 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 部長 (90178020)
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研究分担者 |
内山 茂久 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 上席主任研究官 (40524236)
稲葉 洋平 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (80446583)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 無煙タバコ / 電子タバコ / プルーム / スヌース |
研究概要 |
近年、禁煙・受動喫煙対策に対する関心の高まりに基づき、喫煙率は低下傾向にあるものの国内の喫煙率はまだまだ高い。また、新たな課題として最近、電子タバコを含む無煙タバコ、メンソールタバコなど新たな商品が国内において急速に普及してきている。これらの新規タバコ商品の安全性に関しては、WHO, FDA等で懸念が表明されている一方、系統的な調査が十分に実施されていないのが実情である。本研究では、これら新規タバコ煙に有害因子が存在しないかを、化学分析を実施することによりリスク評価を行うとともに、喫煙対策に関する国内外の情報を収集し、公開していく。それらにより非喫煙者の喫煙行動につながる行為の予防(防煙)、 禁煙行動の妨げになるのを防ぎ、国民が新たな有害化学物質に曝露される機会の増加を予防することを目的とする。 今年度は、近年急速に普及し問題視されている電子タバコの分析を実施した。 電子タバコ蒸気を、分担研究者が開発したハイドロキノン(HQ)含浸シリカと2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)カートリッジを連結した新規のカートリッジにて捕集し、溶出溶液中で2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH )によるヒドラゾン誘導体にして高速液体クロマトグラフ(HPLC)にて分析測定した。13銘柄363本の電子タバコを分析したところ、4銘柄ではカルボニル類の発生を観察しなかったが、他の9銘柄ではアクロレインを含む種々のカルボニル化合物の産生が観察された。またその濃度分布は同じ銘柄、ロットにも非常に広範囲なバラツキがあり、原因を究明したところ、電子タバコカートリッジ溶液のグリコール類が加熱される際に、非意図的に有害なカルボニル化合物が産生していることを報告した。 その他、医薬品として販売されているネオシーダー主流煙から発がん物質のたばこ特異的ニトロサミンや重金属が観察されたことを報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子タバコは、国内では若干関心が薄れたところもあるようだが、これは、国内では「電子タバコ」との名称ではあるが、ニコチンを含むことは法的に認められていない(薬事法違反)ため、ニコチンを要求する喫煙者の関心が薄れたことによる。上記の点からも、たばこ事業法での管理対象となっていないのが現状である。しかしながら、海外では紙巻きタバコの代替としてあるいは併用目的で非常に急速に普及してきている。国内でも、海外産のニコチン入り電子タバコを個人輸入で利用する人も拡大してきている。このような中、電子タバコの利用に関しては、紙巻きタバコより有害性が低く、harm reductionとして有効であるとともに禁煙補助としても有効であるなどの意見と、電子タバコ蒸気にも有害化学物質が含まれるとともに、規制が曖昧で若者の喫煙導入になるなど、専門家の間でも意見が分かれているところである。 このような中、電子タバコの有害化学成分を定量するとともに、その発生機構を示し、性能の悪い製品においては非意図的な有害化学物質が高濃度で算出されることを示すことをできた点は、本製品の規制に関する基礎的な科学的エビデンスを提示する上でも重要な点であり、順調に進展したといえると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ここ数年、急速に拡大してきた無煙タバコ製品、具体的にはスヌースやプルームといった製品について有害性評価を行うとともに、文献的にも現状を評価する。 あわせて使用実態等のアンケートを計画する。
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次年度の研究費の使用計画 |
電子タバコの有害性評価に重点を置き、主としてカルボニル類の解析を中心に実験を進めた。これらの分析には、研究分担者が開発した捕集用カートリッジを用い、研究室内で作成したため物品費の使用が節約できた。また実験補助の謝金が必要なくなったため全体として使用額が当初予定より軽減した。 2年次は引き続き化学分析に関する物品費を多く計上するとともに、実験補助のための謝金経費が計画申請時の当初予定通り発生する予定である。
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