研究実績の概要 |
我が国は,FCTCたばこ規制枠組条約を批准し,健康日本21(第二次)では喫煙率目標として12%が設定された。しかしいまだ喫煙率は高く最大の健康課題である。平成25年国民健康・栄養調査によると、男性喫煙率は32.2%と先進国の中では高く,しかも一時の低下傾向が止まり定常状態である。同調査の結果では,喫煙者で禁煙意志を有する者の割合が24.6%で,前回23年調査の35.4%から急激に低下している。背景には,受動喫煙対策が進む一方で,近年電子タバコやスヌースを含む無煙タバコ,新規タバコ及び関連製品の開発・販売が急速に進んでいることも一因として考えられる。 我々はWHOタバコ研究室ネットワーク(TobLabNet)に参加してきた経験を生かし,電子タバコをはじめとした新しいタバコ及び関連製品の有害化学物質の分析を進めるとともに各種文献より現状を分析した。 電子タバコは製品により,吸入蒸気にIARC group1(ヒトに発がん性がある)に分類されるホルムアルデヒドをはじめとするカルボニル類が含まれていること,また国内では旧薬事法によって許可されていないが個人輸入で入手可能なニコチンを含む電子タバコENDSと,ニコチンを含まないENNDSに分けて各国で規制が進められていることが確認された。2014年モスクワで開催されたFCTC COP6においても電子タバコの規制に関して議論された。 また,薬用吸煙剤として医薬品として販売されるネオシーダーに紙巻タバコ製品中の化学物質の測定法を適用してその評価を行った結果,ニコチンおよびタバコ特異的ニトロサミンが含まれるほか,多環芳香族炭化水素,カルボニル類は,製品1本あたりの葉の重量が紙巻タバコ製品より重いことも関係してか高値となっていることが観察された。 我が国では,科学的根拠に基づいたタバコ製品の規制対策は遅れているが継続した検討が求められる。
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