研究実績の概要 |
生活習慣病の発生には、糖脂質代謝の異常が深く関与している。これら糖脂質代謝は、主に肝臓と骨格筋とが密接に関連しながらコントロールされていることが知られている。しかし、実際にどのような形で関連しているかという詳細な病態生理に関しては、依然不明な点が多い。これらの解明には、「肝臓のみ」あるいは「骨格筋のみ」といった縦断的な研究手法ではなく、「肝臓および骨格筋の機能を同時に評価する研究手法」が必要である。本研究の目的は、複数の生体機能情報をマルチモダリティ(MRI, 超音波)により同時期に測定・解析し、血液や身体データといった血液生化学データと比較することによって、生体内の代謝機能を肝-骨格筋臓器連関という観点で捉え、生活習慣病における病態生理を解明するための正常データのライブラリを構築することである。 肝臓および骨格筋において、安定的かつ正確にMRIデータ「MR spectroscopy : 骨格筋の細胞内脂肪(IMCL)・細胞外脂肪(EMCL), 肝臓内脂肪)/MR perfusion(骨格筋の微小循環), MR diffusion(骨格筋の拡散固有値)」と超音波データ「Controlled Attenuation Parameter (CAP) : 肝臓内脂肪量/Fibroscan : 肝臓の硬度)を取得するための撮像パラメータの最適化に成功した。さらに、本研究では、最適化した撮像パラメータにより、健常ボランティアの「MRI、超音波、血液および体組成(肝機能, 筋酵素, 血糖値, インスリン値, 脂質, 遊離脂肪酸, 脂肪酸組成, 身長, 体重)データ」を取得し、正常データライブラリの構築に成功した。このライブラリは、今後、食事療法と運動療法を要する肥満者および慢性肝疾患患者等の疾患群と比較する際の基礎データとなるため、本研究の臨床的意義は大きい。
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