本研究は、国内外の研究動向や研究代表者の研究環境の状況などから、動物実験を先行させ、第3年度(前年度)の後半(2015年終わり頃)より細胞実験を主に行っている。なお、本年度末の2017年3月30日、金沢地方裁判所は、研究代表者・小川に対する研究妨害などを認定して、それらを理由として、研究代表者・小川(訴訟の原告)へ賠償金を支払うよう金沢大学(代表者の所属機関で訴訟の被告)に命じ(新聞等で報道)、2週間後にその一審判決が確定した。 本年度は、前年度末の培養細胞を用いた予備実験の続きを経て、ヒト由来細胞の寿命などを左右する条件を中心に検討した。具体的には、ヒト平滑筋細胞(正常細胞)を、その細胞の販売元が指定・販売する増殖用培地や、数種類の汎用培地で培養して、増殖能力や寿命の違いなどを調べた。 その結果、販売元が指定・販売する増殖用培地では、目的の通り増殖は早いものの、1ヶ月に満たない期間でほぼ死滅した。これに対して、汎用培地の1種類にウシ血清5%を添加した条件では、増殖が極めて緩やかである一方、約3ヶ月にわたり安定して生存した。前者は予想通り増殖に与える影響の評価系として有用であるが、後者は長期の生存・寿命・疲労・ストレス防御などの評価系として有用であることが示唆された。 次いで、後者を用いて、生体防御タンパク質であるヘムオキシゲナーゼ-1の発現を誘導するポリアミン類などを添加して、寿命や形態、ストレス応答、遺伝子発現に与える影響の解析などを始めた。ただ、寿命を評価するには数ヶ月の期間を要し、今年度内で対照群との有意差が出る条件を見い出すまでには至らなかった。新年度に入った現在もこれらの実験を続行するとともに、発現解析用のサンプルを凍結保存しており、これらを用いて今後も寿命延長やストレスに対する生体防御機能などが発揮される条件などを見いだす研究を続ける予定である。
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