研究課題
身体活動・運動と内部臓器との相互作用を明らかにすることは、競技能力向上に役立つに留まらず、健康増進に大きく貢献することは周知であるが、腸管・消化器系機能の低下が骨格筋へ及ぶ影響に関しては、未だ明らかにされていない。近年では骨格筋が萎縮する高齢者のサルコペニア予防を目的とした運動処方がさかんに取り入れられており、骨格筋萎縮・筋肥大のみに焦点を当てた報告は数多いものの、栄養摂取状況や腸管での吸収が骨格筋肥大に関連するという着眼点から、高齢者のサルコペニアの原因を模索した研究はみられない。そこで本研究では、高齢者のサルコペニア(骨格筋萎縮)が腸管機能・消化器系機能老化に関与している可能性の立証、さらに、ギプス固定で筋不活動状態(骨格筋萎縮誘導)の後、トレーニングによる筋肥大過程において、腸管由来の骨格筋萎縮・肥大因子を明らかにすることを目的として実験を行った。平成27年度には、腸管機能・消化器系機能の老化に伴う骨格筋萎縮を招いている可能性に注目し、動物実験を用いて、腸管機能の老化と骨格筋萎縮・肥大の影響を調べた。その結果、加齢マウスが若齢マウスにおいて、ギプス固定で筋萎縮を誘導した後の筋肥大過程を、筋重量および免疫組織化学染色によって筋線維周囲径によって調べたところ、加齢マウスにおいて、筋線維の肥大過程が遅延することが示唆された。加齢マウスおよび若齢マウスに乳酸菌摂取を行い、筋萎縮からの肥大過程を調べたところ、若齢マウスには変化がみられなかったものの、加齢マウスにおいては、肥大過程の遅延が改善されることが示唆された。これらのことから、加齢に伴う腸管機能低下は、腸内環境を改善することによって骨格筋肥大過程を改善する可能性が示された。また、各マウスの門脈採血における栄養因子(血中アルブミン)を調べたところ、乳酸菌摂取によって、改善することが明らかになった。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 4件)
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