研究課題
挑戦的萌芽研究
高齢化社会を迎えて様々な運動機能リハビリテーションの重要性が増している。リハビリテーションの基盤は運動学習である。運動学習においては、連続して行う集中学習よりもトライアル間に休憩を挟んだ分散学習が有利である。この分散効果(spacing effect)は休憩の重要性を意味するが、“休憩中”の神経機構に着目した研究はほとんどない。最近、“休憩中”にROS(活性酸素種)が産生されること、ROSが運動記憶に重要なNO(一酸化窒素)と相互作用して持続性のシグナル分子(8-ニトロ-cGMP)が生成されることが見いだされた。そこで、本課題ではNO系が重要な役割を果たす運動学習に着目して、休憩中に産生されるROSとNOの相互作用による持続性シグナルが分散効果への寄与を解析する。中枢神経系における8-ニトロ-cGMP、さらに、8-ニトロ-cGMPによるCys残基が修飾されて生じるグアニル化タンパク質の分布を免疫組織化学的方法を用いて詳細に解析した。8-ニトロ-cGMPおよびグアニル化タンパク質は、小脳、その中でも、プルキンエ細胞に高濃度で存在する事を明らかにした。本課題で対象とする視機性眼球応答を担う小脳片葉のプルキンエ細胞にも8-ニトロ-cGMPおよびグアニル化タンパク質が存在していた。小脳片葉における8-ニトロ-cGMPおよびグアニル化タンパク質はプルキンエ細胞に集中していたが、その濃度はプルキンエ細胞ごとに大きな差がある事が明らかとなった。小脳プルキンエ細胞に8-ニトロ-cGMPおよびグアニル化タンパク質が高濃度で存在することは、これらの分子の小脳での重要な機能を予想させ、また、NO-ROS系から生じる活性窒素種がプルキンエ細胞において8-ニトロ-cGMPへと変換されている事を示している。
2: おおむね順調に進展している
研究の基盤となる視機性眼球運動測定システムおよび小脳片葉への薬物投与方法をほぼ確立することができた。さらに、各種の活性酸素種関連試薬類も順調に入手・作成された。
これまでに得られた結果をもとに、ROS消去剤や8-ニトロ-cGMP阻害剤を用いて、視機性眼球順応の分散学習への効果を解析する。さらに、分散効果が8-ニトロ-cGMPにより模倣されるかは興味ある点であり、8-ニトロ-cGMP存在下でトライアル回数を減少させて視機性眼球順応を解析する。
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