研究概要 |
本研究が目指す最終目的は、妊婦と胎児にとって音楽が果たす生態学的役割について解明することである。それは、古代中国の時代から「養生的胎教」(李,2010)と呼ばれてきた概念(妊婦の健康管理が胎児の健康・発育に影響を与えるとする考え方)や、最近の実証的研究に基づく理論的枠組みである「胎児起源 Fetal Origin(Paul, 2010)、すなわち、出生後の子どもの体質や食の好み、心理的特性が胎児期の経験に由来するという理論につながっている。近年、音楽が健康に与える様々な効用(McDonald et al.,2012)が明らかになってきているが、本応募課題では、特に妊婦と胎児に焦点を当て、妊娠中の音楽の効用に関するメカニズムに迫る。具体的には、音楽に対する妊婦の反応とそれに影響を与える妊婦の個人特性との関連性を明らかにした上で、妊婦だけが音楽を聴いているときと胎児だけが音楽に接触しているときの、胎児の反応を比較検討することを目的としている。 具体的には、妊娠週数に基づき、胎児の発達レベルを「聴覚形成前・胎動感有(18~22 週)」、「聴覚形成期(23~27 週)」「聴覚完成期(28~32 週)」「聴覚完成後(33~36 週)」の5段階に分け、各段階に該当する妊婦20 人(計80 人)を対象に、妊婦・胎児それぞれから次のデータを採集し、分析・検討している。 妊婦:「実験前後の気分測定(POMS 短縮版)」「音楽聴取前後の唾液中ストレスマーカー(アミラーゼ)測定」「楽しさ、優しさ、悲しさを表現している楽曲聴取時の連続心拍測定」「各楽曲に対する印象評価」「成人用気質調査票短縮版(ATQ-Short)」「食事調査票」「ストレス回避・解消行動調査票」「一般参加者情報のための質問紙(音楽経験含む)」 胎児:「振動音響刺激検査(胎児心拍パターンの確認)」「超音波診断装置による胎児の映像録画」
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