研究実績の概要 |
本研究は、虐待やネグレクトを含む不適切な養育を受けた愛着障害の子どもを対象に、発達精神病理学の視点から、内包される子どもの症状や併存疾患の鑑別に役立つ生体指標の開発を目的としている。この背景には、児童虐待を含む不適切な養育環境下での成長が将来の精神疾患のハイリスク群である事(1995-97 ACE Study, CDC, USA)、更にはその治療においても治療反応及び予後の悪さから、幼少期の逆境体験や不適切な養育経験を診断時にグループ化するという新たな提案 (Ecophenotype, Teicher & Samson 2013) が前提となっている。 眼差しの部分だけの写真から相手の感情を推測する眼差し認知課題(Reading the Mind in the Eyes Test, Baron-Cohen et al. 1997, 1999)を用いてfMRI研究を行った。ターゲットコントラストはPositive - Negativeと(Positive + Negative) -Genderとし、Genderを中立課題とした。 9歳から17歳までの愛着障害群38名と、性別と年齢をマッチさせた定型発達群26名を対象にfMRIを実施した。その結果、 Positive 表情の読み取り課題において被殻 (Lt Putamen) の賦活度低下を認めた(cluster P = 0.034, FWE-corrected)。 眼差し認知課題における先行研究でも、Positive 表情の読み取りに関して被虐待群と定型発達群間に有意な差が認められている。更に環境による群比較(不安定群、安定群及び定型発達群)では、居住環境と課題に対する脳活動に差が生じているという結果も得られており、現在論文投稿の準備を進めている。
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