研究課題/領域番号 |
25560392
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研究機関 | 中部学院大学 |
研究代表者 |
竹ノ下 祐二 中部学院大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40390778)
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研究分担者 |
島田 将喜 帝京科学大学, 生命環境学部, 講師 (10447922)
水野 友有 中部学院大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60397586)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 協同育児 / ニホンザル / チンパンジー / ゴリラ / 乳幼児 / 東山動植物園 / 金華山 / ラ・ルーラ |
研究実績の概要 |
(1)中部学院大学子ども・家庭支援センターにおいて、ヒト3歳児と母親4ペアをそれぞれ1時間x5回の観察を実施し、ビデオ撮影した。観察データは現在分析中だが、3歳児は非母からの働きかけを自然に受けいれること、母親は、他の子どもや非母など他者が介在するとわが子に対して規範をまもるようしむけることが示唆された (竹ノ下)。 (2)昨年度同様、東山動物園のゴリラの乳児と非母の社会交渉を観察した。乳児は母親から離れて父、姉と遊ぶことが多くなったが、母親が自分の視界内にいないと不安を示した。母親も、乳児が自分の視界外で非母と交渉することを嫌がった。ゴリラのストレスモニタリングを行なう目的で糞サンプルを収集した (竹ノ下)。ニホンザルのコドモが形成する社会的遊びのネットワークとの比較をする目的で、野生チンパンジーの遊びの得られたデータを分析した。チンパンジーの遊びは、樹上より地上の方が参与者数が多く、長時間持続していた(島田)。野生ニホンザルのコドモとその母親や非母とのインタラクションを観察する目的で、宮城県金華山の野生ニホンザルを対象に、2014年12月と、2015年1月、3月にフィールドワークを行った (島田)。 (3)昨年度同様、ヒト乳児とその養育者(母親)を対象に、特定の他者とそれ以外の他者(非養育者)に対する反応に関する実験的観察を実施した。生後2ヶ月児の非接触対面場面において、対象児は養育者よりも非養育者に対して笑顔などの親和的表情を示した。養育者に対しては喃語の発声が多く、多様な表情を示していた(水野)。京都大学霊長類研究所等で撮影された出生直後のチンパンジー母子交渉場面のビデオ記録の定性的なデータ分析を進めた。(水野)。 研究成果の一部を、日本霊長類学会、国際霊長類学会、日本動物行動学会で発表した。1月末に研究連絡会議を開催し、成果報告と今後の研究の進めかたについて討論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) ラ・ルーラにおける母子ペアの観察は順調に進み、すでに4ペアについて予定の観察時間を達成した。非母と幼児の交渉、母親によるわが子以外との交渉について、十分なデータが集まりつつある。 (2) 東山動物園のゴリラ乳児は順調に成長しており、観察データも蓄積されている。また、2013年6月に生まれ人工哺育化におかれていた別の乳児が群れ復帰を果し、乳児どうしの社会交渉もみられるようになるなど、より多様な行動を観察することができた。近接関係に関する分析は順調に進んでおり、ほぼ完了している。金華山での調査は、多くの出産がみられたため、十分なデータ収集を行なうことができ、2013年度に生じた遅れをとりもどした。また比較対象のチンパンジーの行動分析もほぼ完了している。 (3)ヒト母子を対象とした実験的観察のデータは順調に収集でき、データ分析も進めている。出生直後のチンパンジー母子の3ペアのデータ分析がほぼ完了している。 これらの成果は、随時学会、研究会等で発表し、公表するとともに、参加者との討論や助言を通じて考察を深めている。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 子ども家庭支援センターでの母子の観察については、もう1ペア、5時間の観察を実施する。撮影した映像データを分析し、ゴリラと比較可能な形でまとめる。 (2) ゴリラの行動観察の結果について、撮影した映像の分析をすすめる。近接関係の分析はほぼ完了しているので、社会行動の種類ごとに、その生起頻度の推移を分析し、ゴリラの非母ー子関係を解明する。金華山のニホンザルの遊びについて、遊びは血縁とともにその他の社会関係に影響を及ぼしている可能性があるので、コドモの遊び関係と母親の育児との関連を検討する。 (3) ヒト母子、チンパンジー母子のデータ分析を進め、発達初期における母ー子の関係および非母ー子の関係を比較検討する。 研究成果をまとめ、英文学術雑誌に投稿する。また、霊長類とヒトにおける非母-子関係と協同育児の進化に関する総説を執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね計画通り支出したが、情報収集のために2014年8月に参加した国際霊長類学会(ベトナム)への旅費支出が、想定よりも数万円程度少なくて済んだために、その分が繰り越される結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
主として本科研最終年度の成果報告のための学会参加旅費、参加費、英文校閲のために使用する。
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