研究課題/領域番号 |
25560397
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大利 徹 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70264679)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フェガノマイシン / ぺプチド抗生物質 / 放線菌 / ペプチドライゲース / リボソーマルペプチド |
研究概要 |
放線菌が生産するフェガノマイシン(PM)は、N-末のフェニルグリシン誘導体に長さと配列の異なるペプチド(NVKDRとNVKDGPT)が結合している2種類が知られている。その生合成を予測すると、非タンパク性のアミノ酸をN-末に持つことからNon Ribosomal Peptide Synthase(NRPS)により生合成されると推定されるが、NRPSは基質であるアミノ酸を活性化するアデニレーション(A)ドメインの認識は厳密であることから、どのような機構でこの多様性が導かれるか興味が持たれた。そこで、その生合成遺伝子クラスターの同定を試みた。ドラフトゲノム配列中にフェニルグリシン誘導体の生合成遺伝子オルソログを探索し目的クラスターを見出した。しかし、最長8つのアミノ酸を活性化できる巨大なNRPSは存在しなかった。そこで、ペプチド部分がリボソーム関与で合成される可能性を考え塩基配列を精査した結果、両ペプチド配列を含む38アミノ酸からなる遺伝子を見出した。本遺伝子の関与は、遺伝子破壊によるPM生産性の消失により確認した。次いで、フェニルグリシン誘導体とペプチド(NVKDRとNVKDGPT)のペプチド結合を触媒する酵素をクラスターに探索した。これまでペプチド結合を触媒する酵素の多くはATPを要求する。そこでATP結合モチーフを持つ遺伝子を探索した結果、前駆体ペプチドをコードする遺伝子上流に機能未知の候補遺伝子を見出した。本遺伝子を破壊した結果、PMの生産性が消失したことから、組換え酵素を用いて実証実験を行った結果、両基質のペプチド結合を触媒することが分かった。本酵素は、ペプチドを求核剤とする初めての例であるとともに、リボソームとペプチドライゲースという機構の異なるマシナリーによるペプチド生成の初めての例でもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、フェニルグリシン誘導体とリボソームで合成された前駆体ペプチドが、生合成遺伝子クラスター上流に見いだされたNRPSで生合成されると仮定し実証を試みたが予想に反する結果となった。しかし、クラスターの遺伝子を精査した結果、ペプチドを求核剤として用いる新規ペプチドライゲースを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
この新規ペプチドライゲースについて、基質特性など詳細な酵素学的諸性質を調べる。また、ゲノム解析された他の放線菌にも本遺伝子のオルソログが存在することから合わせて機能解明を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
3月納品分の支払が4月にずれ込んだため。 3月に納品済
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