研究課題
放線菌が生産するペプチド系抗生物質、フェガノマイシン(PM)は、N-末のフェニルグリシン誘導体に、長さと配列の異なるペプチド(NVKDRとNVKDGPT)が結合している2種類が知られている。昨年度筆者は、その生合成研究を行い、2つのペプチド部分がリボソームにより、38アミノ酸からなるプレカーサーペプチドとして供給されること、さらにATP-graspモチーフを持つPGM1がフェニルグリシン誘導体をATP依存的にリン酸化し、次いで、NVKDRとNVKDGPTが求核剤として働きPMを生成することを明らかにした。今年度、組換え酵素を用いて詳細な酵素学的諸性質を解析した。その結果、本酵素は幅広い基質特異性を有することが分かった。N-末として、D-amidino phenylglycine、2-guanidinoacetic acid、 creatineも基質となった。さらに求核剤として、NVKDGPT の任意のアミノ酸を他に置換した種々のペプチドやC-末からアミノ酸を順次欠失させたジペプチドまでの各種ペプチド、さらにはPGMとは全く関連が無い、アスパルテームや昆虫由来の18アミノ酸から成る抗菌ペプチドapidaecinも基質となることが分かった。本酵素が示す幅広い基質特異性を理解するため、結晶構造解析も行った。種々の基質との結晶化を試みた結果、AMPとの複合体として結晶を得ることが出来た。解析の結果、配列相同性が18%と低いが、同じくATP-grasp superfamilyに属する、Glycinamide ribonucleotide synthase(PurD)と構造的に類似していることが解った。また、N-末のグアニジノ基の認識や求核剤として働くペプチドの認識に関わるアミノ酸残基をドッキングシュミレーションにより推定し、変異導入実験により確認した。
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Nat. Chem. Biol.
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http://www.hokudai.ac.jp/news/141125_pr_eng.pdf