研究実績の概要 |
天然より微量しか得られない生物活性天然物や、誘導化の足がかりとなる官能基を持たない化合物でも簡便にプローブ分子へと誘導できる手法の確立を目指し、今年度は官能基非依存的な結合形成反応による誘導化を可能とする高反応性化学種の前駆体として、alkyldiazirineおよび2,3,5,6-tetrafluorophenyl azideに着目した検討を行った。両化合物に光照射することでcarbeneおよびnitreneを発生させ、モデル化合物との結合形成反応を検討した結果、両者とも反応は進行したが、これまで用いていた3-aryl-3-trifluoromethyldiazirineとは異なる反応性や位置選択性を示すことが明らかになり、生成物の構造を精査した結果、3-aryl-3-trifluoromethyldiazirineが最も官能基非依存性が高いことを見出した。 上記の検討で見出した最適な反応条件を用いて、実際に研究室で見出した生物活性天然物のプローブ化と標的分子捕捉についても検討した。フラン環と二重結合以外の官能基を持たないことから誘導化が困難な抗腫瘍性海洋天然物furospinosulin-1に対して本法を適用したところ、3-aryl-3-trifluoromethyldiazirine由来のcarbeneとの反応による直接的な誘導化が進行することを見出し、Huisgen反応によるビオチンタグの導入を経て、2工程でのプローブ分子化に成功した。得られたプローブ分子を用いて、すでに明らかにしているfurospinosulin-1の標的タンパク質との結合親和性を評価したところ、精密に設計・合成したプローブ分子よりは低下しているものの、標的タンパク質を捕捉できる能力を保持していることを見出し、本方法論の有用性を示すことが出来た。
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