研究課題/領域番号 |
25560404
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
垣内 喜代三 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (60152592)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ケージド化合物 / チオクロモン / 生理活性分子 / ホタルルシフェリン / アンケージング / 長波長紫外光照射 / ルシフェラーゼ反応 |
研究概要 |
本研究では、我々が新規に開発したチオクロモン型光分解性化合物を用いて、従来法と比較してより詳細に生命現象を解明できる「第二世代のケージド化合物」の創成を目的としている。これまでケージド化合物に用いられてきた光分解性保護基とは異なり、今回使用したチオクロモン骨格を有する光分解性保護基は、光照射によってアンケージングされる際に、強い蛍光を発する特長を有する。 本年度は、まず、このチオクロモン型光分解性保護基をケージド化合物へと展開できるかを検討した。数ある生理活性分子から活性検出が容易なホタルルシフェリンを選択し、チオクロモン骨格を有する新規ケージドルシフェリンを合成した。水中で365nmの紫外光を光源としてアンケージング反応を検討した結果、水中でも効率よくアンケージングが進行することが判明した。ルシフェリンの再生は、ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応で生成するオキシルシフェリンの発光をルミノメーターで検出することにより確認できる。さらに、オキシルシフェリンの発光量は、アンケージングの際の光照射時間が長くなるにつれて増大したことから、光照射時間依存的にアンケージングが進んでいることも確認できた。 次に、生体内利用を指向するために、生体細胞に影響を与えないより長波長の405nmの紫外光を光源とするアンケージング反応を検討した。ケージドルシフェリンの吸光係数は365nmよりも405nmの方が小さいためアンケージングに要する時間は長くなったものの、365nmの場合と同様に光照射時間依存的にオキシルシフェリンの発光量が増大した。この結果は、チオクロモン型光分解性保護基の生体内利用への可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、チオクロモン骨格を有する新規のケージドホタルルシフェリンの合成を達成し、さらに水中でのアンケージング反応の進行とオキシルシフェリンの再生も確認できた。さらに照射波長違いによる効率の違いも検討できており、研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を踏まえ、まずは細胞内におけるケージド化合物のアンケージングや細胞内蛍光強度の測定に着手する。そのために、チオクロモン骨格を有する新規のケージド核酸あるいはケージドオリゴ核酸を合成し、これをアンチセンス分子として用いるケージドアンチセンスオリゴの作製を行う。これにより光照射によるアンチセンス分子機能の制御を検討するとともに、細胞内に合成したケージドアンチセンスオリゴを導入し、細胞内で脱保護の検討ならびにアンチセンス分子の機能評価を行う。 また、細胞内評価を行うためには、細胞にダメージを与えない弱い光で十分な生理活性分子を放出し、低濃度で利用でき、さらに高い水溶性が求められる。そのため、必要に応じて光分解性保護基の分子変換を行う。 さらに、フローサイトメトリーを利用したアンケージング細胞セレクション手法の確立を目指す。つまり、アンケージング後の蛍光を指標にしたフローサイトメトリーによって、光照射により細胞内でアンケージングされることで生理活性分子の機能が発現している細胞(アンケージド細胞群)とアンケージングされていない細胞(ケージド細胞群)にセレクションする。これにより得られた、生理活性分子の機能が均一に発現している細胞群について、従来法で得られる結果と比較して本手法の有用性を確認する。
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