研究課題/領域番号 |
25560404
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
垣内 喜代三 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (60152592)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ケージド化合物 / チオクロモン / 生理活性分子 / アンケージング / オリゴ核酸 / アンチセンス分子 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、我々が新規に開発したチオクロモン型光解離性保護基を用いて、従来法と比較してより詳細に生命現象を解明できる「第二世代のケージド化合物」の創成を目的としている。これまでケージド化合物に用いられてきた光解離性保護基とは異なり、本課題で使用しているチオクロモン骨格を有する光解離性保護基は、光照射によってアンケージングされる際に強い蛍光を発する特長を有している。昨年度までにホタルルシフェリンを生理活性分子に選択し、保護・脱保護反応を検討して、チオクロモン型光解離性保護基がケージド化合物として利用可能であることを明らかにしている。本年度は細胞内でのアンケージング挙動を観察するために、新規のケージド核酸の合成に着手した。ターゲット核酸としてデオキシチミジンを選択し、合成したケージドチミジンの光脱保護を検討した。その結果、光照射依存的に蛍光強度が増大し、蛍光測定による脱保護過程のモニタリングに成功したかに思われたが、その構造は予想される蛍光発光体の構造とは異なっていた。より詳細に検討した結果、新たに生成した蛍光発光体を中間体として一度経由したのち、元のデオキシチミジンが再生されることが明らかとなった。このように蛍光発光体を中間体とするため、デオキシチミジンの再生効率は必ずしも高くはなかったが、合成したケージドチミジンを用いてケージドオリゴ核酸を合成し、アンチセンス分子としてのオリゴ核酸の機能を評価した結果、光照射を行うことで、アンチセンス分子としての機能が復元することを見出すことに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的の新規ケージド核酸の合成を達成するとともに、光脱保護後に蛍光発光を検出することも達成できたが、蛍光発光体が予想とは異なる構造であり、その解明調査を先に進めることが必須であったため、当初予定していた細胞内評価を実施することができなかった。しかしながら、ケージド核酸をケージドアンチセンスオリゴ核酸へと展開すると共に、光照射によるアンチセンス機能の復元を確認することができたことから、チオクロモン型光解離性保護基の有用性は明らかにできており、次年度には細胞内評価へと展開可能と考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を踏まえ、細胞内におけるケージド化合物のアンケージングと細胞内蛍光強度の測定に着手する。さらに細胞内評価を行うためには細胞にダメージを与えない弱い光で十分に生理活性分子を放出し、低濃度で利用できるとともに、高い水溶性が求められる。これらを満たすような保護基の合成にも着手する予定としている。 加えて、フローサイトメトリーによって、光照射により細胞内でアンケージングされることで生理活性分子の機能が発現している細胞とアンケージングされていない細胞にセレクションすることにも着手する。これにより得られた、生理活性分子の機能が均一に発現している細胞群について、従来法で得られる結果と比較して本手法の有用性の確認を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
目的のケージド化合物の合成を達成し、光脱保護後に蛍光発光を検出することも達成できたが、蛍光発光体が予想とは異なる構造であり、その解明調査を先に進めることが必須であったため、当初予定していた細胞内評価を実施することができなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
蛍光発光体の構造解明に目途がついたため、予定していた細胞内での脱保護評価やフローサイトメトリーを用いた検討を行う。そのための消耗品の購入や得られる成果を基に各種学会、シンポジウムで発表するための費用に利用する。
|