研究課題/領域番号 |
25560410
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 克典 独立行政法人理化学研究所, 田中生体機能合成化学研究室, 准主任研究員 (00403098)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 68Ga-DOTA / アザ電子環状反応 / アルデヒド / アミノ基 / ポジトロン / ペプチド / PET |
研究概要 |
生体分子の一般的な68Ga-DOTA標識の実現を目的とする本研究において、独自の「高速アザ電子環状反応」を駆使した2つの方法論を評価するが、平成25年度は以下の二重電子環状反応による方法を検討した。 すなわち、これまでに報告者が開発した共役エステルアルデヒドを二量化することによって、アミノ基を持つ68Ga-DOTAとタンパク質や細胞表層のリジン残基を二回の段階的なアザ電子環状反応によってワンポットで効率的に繋ぐことを検討した。ポジトロン放出金属である68Gaを使用する前に、まずはコールドのGaを用いて検討した。アミノ官能基を持つ安定なDOTA分子に対して、予めGaを100度、30分の反応時間で導入した(ステップ1)。次いで、得られたGa-DOTAアミンの溶液をそのまま用い、これに対してアルデヒド二量化プローブを作用させ、1つ目の高速アザ電子環状反応を数分以内で実施した(ステップ2)。この際に、濃度を厳密に制御することで、1分子のアミンと選択的に反応させることを検討した。高濃度のGaを用いて実験を行った際には、濃度を厳密に調節でき、2量体の生成を防ぐことができたが、低濃度のGaを用いた場合には、濃度による反応性の調節ができず、目的とする化合物を効率的に得ることはできなかった。 高濃度で調製したGa-DOTAアミン溶液に対して、さらに続けてモデルペプチドを室温、短時間作用させたところ、2つ目の高速アザ電子環状反応が進行し(ステップ3)、高速なGa-DOTA標識を実施することができた。しかしながら、実際にポジトロン放出金属である68Gaを使用する際には、極低濃度の溶液を使用しなければならない。そこで、平成26年度に実施する2つ目の研究結果を待って、最終的な手法とすることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
効率性に不安は残るものの、予定どおり1つ目の方法論を評価することができた。平成26年度に検討する別法との比較を以て、生体分子への68Ga-DOTA標識の一般手法として、さらに精査、確立する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では、まず官能基を持つDOTAに対してGaを5分以内で配位させた後(ステップ1)、これを続けて共役アルデヒドに対して官能基選択的な反応を用いて結合させる(ステップ2)。さらに、アザ電子環状反応により、標的の生体アミンに対して短時間で全段階をワンポットで標識する(ステップ3)。 平成25-26年度で実施する第1、第2両者のワンポット法の実施を基に、生体分子への68Ga-DOTA標識の一般手法としてどちらが適当かを判断し、手法を精査、確立する。最終的にポジトロン放出金属である68Gaを用いて生体分子への68Ga-DOTA標識を実現する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度で使用した試薬類がごくわずかではあるが、予定より安価に入手できたため。 主に、試薬や溶剤の確保のための物品費として使用する。平成25年度で生じた使用額の差額分は、平成26年度で実施する手法に必要不可欠な反応基質(化合物)を購入するため使用する。一方、国内外での成果発表やディスカッションのための旅費、さらに印刷費などその他の経費として使用する。
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