研究課題
平成25年度に検討した二重電子環状反応による68Ga-DOTAワンポット標識法は問題を残していたので、第2のワンポット法を検討した。本法では、電子環状反応の基質であるアルデヒドプローブに対して、まず68Ga-DOTAを結合させる。続けて、生体分子のリジン残基と反応させることにより、生体分子の効率的なワンポット68Ga-DOTA標識を検討した。既に平成25年度の結果により、報告者のアルデヒド分子は歪んだ活性化アセチレンとは反応しないことが分かっていた。そこで、アルデヒドプローブに8員環アセチレン基を導入し、あらかじめ調製したコールドのGaを導入したアジド官能基を持つDOTAに対して、歪み解消クリック反応により結合させた。この場合には、実際にPET実験に使用する極微量の68Ga-DOTAの濃度でも十分対応可能であることが判明した。さらに、続けてワンポットでペプチドやタンパク質を作用させることにより、電子環状反応を効率的に進行させ、コールドのGa-DOTAで標識することに成功した。これらのコールドのGaを用いた検討を基にして、ポジトロン放出核種である68Gaを用いて標識実験を実施した。種々検討を行った結果、まず、アジド基を有するDOTA配位子に対して、68Ga3+を塩酸中、100 oCで15分間反応させることにより配位させた。HPLCにより速やかに精製した後、さらに歪んだアセチレンを有する共役アルデヒドプローブへの結合(75 oC、15分、100%)、さらに続けてペプチドやタンパク質のアミノ基へほぼ定量的に標識することに成功した。本法を活用して、68Ga-DOTAだけではなく、64Cu-NOTA、あるいは MRイメージングの標識基として使用するGd-DOTや蛍光基にも展開できることを示し、不安定な生体分子や細胞表面にも使用しうる汎用的な標識法として実現した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに、不安定な生体分子や細胞表面にも使用できる高効率的かつ汎用的なワンポット68Ga-DOTA PET標識技術を実現した。生体分子のイメージングを変える革新的な技術を確立した。
平成26年度に確立したワンポット合成法を基にして、実際に様々なペプチドや微量タンパク質、あるいは生細胞のPETイメージングを実現し、ライフサイエンス分野における革新的な汎用技術として実現する。
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