研究課題/領域番号 |
25560411
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
日比 輝正 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (50554292)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 組織染色 / 蛍光色素 / ソルバトクロミズム / 多光子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒトの組織などに適用可能な、組織浸透性が高く深部において組織の構造を描出可能な、新しい蛍光色素の開発である。本研究計画では、特にソルバトクロミズムによる環境応答性に着目し、私たちが予備的検討から見出した、組織構造に応じて蛍光波長が変化する化合物を基本に、組織染色性が高く実用に足る新奇蛍光色素を開発することを目指している。前年度には、基本構造についての検討を行ない、化合物に要求される性質の方向性が見えてきたために、今年度は、そのような化合物の合成方法についての検討を行なった。一方で、目的となる化合物を入手できて組織の深部までを染色できたとしても、評価するためには、まず、組織の深部を明瞭にイメージングする技術が必要となる。そこで、H26年度では、その方法について検討を行なった。固定組織においては散乱が増大し、深部の可視化が困難になることが知られている。これを克服する方法として、2, 2'-thiodiethanolを利用した組織の透徹化法に関しての検討を行なった。また、深部観察の際の、試料と対物レンズの浸液との間の屈折率差から生じる球面収差を、光学的に補正する技術の改良についても、前年度に引き続き取り組んだ。3次元的なイメージングにおいては、焦点面をずらしながら多数の光学断層像を取得する必要があるために、より高速なイメージング法が求められる。このような高速な画像取得法は、本研究で開発を目指す蛍光色素を生きた個体に対して適用する場合にも有用である。そこで、高速に光学断層像の取得が可能な、スピニングディスク式の多点走査型2光子顕微鏡の改良にも取り組んだ。今後は、これらの技術を有効に活用して、新規設計の蛍光分子について評価を実施する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画においては2年目のH26年度中には新設計の化合物を入手して評価を手がけている予定であったが、発注先の状況などからH27年度に回すことになった。このため、H26年度には、評価方法についての検討を重点的に実施した。
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今後の研究の推進方策 |
新設計の化合物については、発注先との交渉を済ませており、納品時期も確定しているため、H27年度には、これら化合物についての一定の成果が期待できる。また、H26年度に手がけた高速のイメージング手法については、評価に要する時間を短縮し、効率的に研究を進めることを可能にする。更に、最終的に目指しているin vivoイメージングへの適用についても、予備的な検討は済ませているため、新設計の化合物についても早い段階から実験に取り入れて結果に結びつけていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度には新設計の化合物の合成を外注する計画であったが、発注先の状況などからH27年度に遅らせることになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
新設計の化合物を入手後に行なう基本的評価の実験項目についても合わせてH27年度にずらす必要があり、次年度に繰り越した分は、これらの実験のための消耗品の購入に使用する。また、in vivoイメージングのために新設計の化合物を個体の組織へ投与する方法について、有識者に実験手法を習うなどの必要が生じる可能性が考えられる。その場合、必要に応じて、その情報収集のための旅費として使用する可能性がある。
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