研究課題/領域番号 |
25560412
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
坂本 清志 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (30335228)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / ヒストン / 翻訳後修飾 / 分割型緑色蛍光タンパク質 |
研究概要 |
ポストゲノムシーケンス時代において、従来のセントラルドグマやメンデルの法則の例外に位置する「エピジェネティクス」機構の解明および制御が重要な研究題材となりつつある。なかでも、ヒストン N および C 末端に存在するヒストンテール (20~30残基) におけるアセチル化、メチル化、リン酸化等の翻訳後修飾はクロマチンを構成する種々の生体分子の組成・分布に影響を与え、遺伝子発現制御において重要な役割を果たしている。以上の背景を踏まえ、平成25年度における研究においては、ヒストン翻訳後修飾パターンの特異的検出を可能とする新規蛍光タンパク質型プローブを開発することを目的とした 。 今回の実験では、214 位分割型緑色蛍光タンパク質 (Split-GFP) を基体として用いた。プローブ分子構築にあたって、分割されたタンパク質フラグメントに対し、高次構造既知のヒストン翻訳後修飾認識ドメインを複合化した。具体的には、ヒストン H3 上の 9 位ならびに 27 位のトリメチル化 Lys (KMe3) を特異的に認識する HP1 および CBX4由来クロモドメインを分割型 GFP の N および C末側断片に複合化した。蛍光スペクトル測定の結果、9および27位に同時に KMe3を持つヒストン H3 ペプチド存在下においてのみ再構成反応の促進とより高いGFP 蛍光が観測された。以上の結果から、分割型GFPを利用することで、ヒストンテール上の特定翻訳後修飾パターンを特異的に検出可能な蛍光タンパク質型プローブの構築を達成出来たものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画としては、ヒストン翻訳後修飾パターンの特異的検出を目的として、分割型蛍光タンパク質を利用した新規タンパク質型検出系の構築とその分光学的性能評価を目的としていた。この目的は、おおむね達成出来たものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
分割型蛍光タンパク質を利用する第一世代プローブ分子は励起光を必要とするため、細胞への光損傷や生体組織による励起光吸収等の問題が予測される。従って、一細胞長時間観測や動物体内におけるヒストン翻訳後修飾パターン検出への応用には困難を伴う可能性がある。この点をふまえ、分割型発光タンパク質を用いた第二世代タンパク質型プローブ分子の開発を行う。プローブ分子設計における基本的な方法論は分割型蛍光タンパク質プローブ構築における戦略と同様であるが、分割型ルシフェラーゼをタンパク質側の基体として用いる。分割型ルシフェラーゼの自発的再結合を促すために、デザインした coiled-coil 構造等の特異的ペプチド間相互作用モチーフを積極的に利用することも計画している。また、発光極大波長や基質特異性の異なるルシフェラーゼを活用することで、複数ヒストン翻訳後修飾パターンの同時検出システムの構築を達成する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
異なる翻訳後修飾パターンを施したヒストンテールペプチドライブラリを構築予定であったが、平成25年度はその一部のペプチドの調製で目的を果たすことが出来た。 構築したヒストン翻訳後修飾認識プローブの性能評価さらに詳細に行うために、翻訳後修飾を施したヒストンテールペプチドライブラリの化学合成を拡張して行う。研究経費は、アミノ酸誘導体、ペプチド合成用試薬、合成・測定用器具、クロマトカラムおよび制限酵素等の消耗品は、本申請課題におけるペプチドの合成ならびに関連タンパク質の調製に使用する。
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