研究課題/領域番号 |
25560420
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
戸谷 希一郎 成蹊大学, 理工学部, 准教授 (80360593)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 酵素 / 合成化学 / タンパク質品質管理 |
研究概要 |
我々は独自の合成糖鎖プローブを用いて、小胞体内の糖タンパク質上に存在する高マンノース型糖鎖に作用する新規なエンドマンノシダーゼ様活性を発見した。本活性は当該糖タンパク質からGlc-Manの二残基を一挙に切断するエンド型糖加水分解活性である。またこの反応はこれまで不明であった糖タンパク質折り畳み促進機構から不良糖タンパク質が離脱する際の駆動力を矛盾無く説明するものである。 本研究の目的は、第一に当該活性に対する蛍光標識阻害剤を合成し、これを活用して小胞体エンドマンノシダーゼの同定を行うこと、第二に当該酵素の基質特異性解析を行うこと、第三に当該酵素の活性測定に資する小分子基質の合成を行うことである。最終的には本酵素が係る糖タンパク質品質管理の新しい作用機序を提唱する。 本年度は小胞体エンドマンノシダーゼが共同研究者であるメルボルン大学のSpencer J. Williams博士から提供されたゴルジエンドマンノシダーゼの阻害剤Glc-isofagomine [Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2012, 109, 781.] によって同様に阻害されることを見出した。当該酵素活性はGlcα1-3Glcα1-3Man構造をGlc2Man9GlcNAc2型基質から切断する事実に鑑みると、Glcα1-3Manのグルコース 3位は誘導体化しても基質認識するはずである。そこでGlcα1-3Manのミミックであるグルコース3位にプロピル基を導入し、グルコシダーゼ耐性を獲得した新規阻害剤をデザインし、その合成を試みた。その結果、目的化合物の合成に成功し、本化合物が小胞体エンドマンノシダーゼに対する阻害活性を有しつつ、グルコシダーゼに対する耐性をもつことが明らかとなった。 また小胞体エンドマンノシダーゼの同定に向け、各種電気泳動法を組み合わせた分析法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、計画にあるとおり、当該酵素の新規阻害剤の開発に成功し、また、当該酵素の電気泳動分析法を確立できたため、研究計画は概ね順調に推移している。阻害剤への蛍光色素の導入は検討中であるが、初期的な実験には成功している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に特定された標的酵素の電気泳動候補バンドを切り出し、ゲル内でプロテアーゼ(トリプシン)消化し、ペプチド断片を生成する。得られたペプチド断片を夾雑物質の存在下でもタンパク質の同定に極めて有効なMS/MS イオンサーチ法を用いて分析し、ゲノム情報が明らかな各種タンパク質のトリプシン消化フラグメントのデータベース(MASCOTサーチエンジン)と照合することで小胞体エンドマンノシダーゼを同定する。 次に同定したタンパク質情報を基に、マウス肝臓小胞体画分から標的酵素の比活性を高めた画分を調製し、合成糖鎖基質を用いて小胞体エンドマンノシダーゼの基質特異性解析を行う。その際、糖鎖部に多様性を有する基質群 とともに非糖鎖部(アグリコン)に多様性を有する基質群に対しても、基質特異性を併せて検討することで、本酵素が有する多点認識機構とその認識モチーフを明らかにする。
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