今年度は標的酵素に対する選択性を高めた多点認識型阻害剤の化学合成と、その活性測定に資する小分子基質の合成研究を行った。 これまでの研究でGlcα1-3Manのグルコース3位にプロピル基を導入した2糖誘導体は、標的とする小胞体エンドマンノシダーゼの活性を阻害しつつ、グルコシダーゼ耐性を併せ持つことが分かっている。一方、標的酵素は糖鎖部以外に疎水性のアグリコン部を同時に認識する性質があることも見出している。そこで、前述の2糖誘導体の還元末端にリンカーを介して疎水性パッチとしてFmoc基を導入した新規阻害剤を合成した。本化合物の標的酵素に対する阻害活性を測定したところ、以前に合成した2糖型阻害剤と比較して有意に阻害能が向上することが分かった。これは標的酵素が新規阻害剤を多点認識したことを示す結果であり、選択性の高い阻害剤が合成できたものと考えている。 また標的酵素の小分子基質として、Glcα1-3Manα1-2Man糖鎖の還元末端に同様にリンカーを介して疎水性Fmoc基を導入した化合物を設計し、その合成を完了した。
|